2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530129
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀江 孝司 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (70347392)
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Keywords | 福祉国家 / 世代 / 福祉政治 / 連帯 / 福祉と世論 |
Research Abstract |
野田内閣が、「社会保障と税の一体改革」を打ち出したこともあり、社会保障の負担と給付における世代間格差に、社会的にも大きな関心が集まっている。この問題は、福祉国家の基盤である社会連帯に関わる重要なテーマであるといえるが、日本においてはこの世代間の潜在的な対立を「政治」の問題として理解し研究する努力はまだ乏しい。 これまで、ジェンダーや少子化の観点から福祉国家研究に従事してきた私は、とりわけ近年、福祉と世論についての研究を進め、信頼や連帯といった価値が福祉国家の維持・発展にとって重要であることを認識するにいたった。研究計画書に書いたとおり、この点をめぐっては、実際の福祉政策や福祉国家の構造と人びとの認知、すなわち世論の次元との両方向からのアプローチが必要となる。 2年目にあたる2011年度は、従来の研究の延長で福祉と世論についての研究を継続し、その中で連帯の価値などを探っており、成果の一部は間もなく刊行される。また、今後のより具体的な分析に向け、既存の世論調査のデータベース化を前年度に引き続き進めた。インディアナ大学のG.カザ教授との共著論文では、社会保障制度における世代間格差の問題の一部を、海外に向け紹介した。 他方、福祉国家の構造の次元に関しては、日本を中心にいくらか検討は進めているが、まとまった成果としてはまだ刊行はしていない。2011年度の成果としては他に、ジェンダーと政治についての論考を発表したことや、デモクラシーと福祉国家の関係を問い直す論文集を共編著として発表したことである。世代間公正・正義にとってデモクラシーという視点の重要性は、しばしば指摘されるようになってきており、引き続き検討を進めたい。ただ、世代間正義や連帯の問題と福祉国家の構造について、連関させながら論じていく作業は、主には2012年度の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2010年度の比較政治学会に加え、2012年度には、選挙学会において「ジェンダーと政治」の報告を依頼され、いずれもその意義を認めてお引き受けをしたが、それに予想外に時間を取られた。もちろん、今日の福祉国家研究について、ジェンダー視点はきわめて重要であるので、それらの作業が本研究課題と関係がないわけではないが、世代の問題を直接扱っているとはいえず、予定よりはいくらか計画がずれ込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2010、2011年度に行った調査・研究は、いずれも本研究計画の内容と関係するものであるが、それに加え、世代に固有の問題として、今後はとりわけ以下の二つが重要と考える。第一に、社会保障制度における世代間公平の問題について、これまでにも日本についてはその制度の実態および効果について調べできたが、それを国際比較の観点からどのように評価することができるのかについて、研究が不十分である。第二は、前ページの9にも記したとおり、昨今、世代間公正/正義の問題を、デモクラシーの観点から考察する議論が増えており、その点をめぐる最先端の議論を吸収する必要を感じている。2012年度は、それらも取り込みながら本課題にアプローチする予定である。
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Research Products
(4 results)