2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘゲモニー政党制の比較研究:生成・安定・解体モデルの構築
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22530134
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岸川 毅 上智大学, 外国語学部, 教授 (60286755)
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Keywords | 政治学 / 比較政治 / ヘゲモニー政党制 |
Research Abstract |
第一に、前年度の海外調査と本年度の追加調査で収集した資料をもとに、ヘゲモニー政党制の形成と変容に関する国際比較分析(メキシコ、台湾、セネガル、シンガポール、マレーシア)を行った。このうち台湾の事例に関する成果を「台湾政党システム研究の現状と課題」(早稲田大学台湾研究所、2011年12月)として発表し、先行研究においてはヘゲモニー政党制の形成過程の実証が不十分であり、新たな解釈が可能であることを示した。また、上記比較分析の過程での新たな発見として、ヘゲモニー政党制の成立以前(プレ・ヘゲモニー状況)における議会制および選挙の導入の程度がその後の展開に根本的影響を及ぼしていることがわかり、これについて各事例の成立期のさらなる検証が必要であるとの認識に達した。 第二に、メキシコの事例に関して、近年の政治動向に関する資料を整理しながら、ヘゲモニー政党制解体後(ポスト・ヘゲモニー状況)の政党政治の分析を進めた。とりわけ、PRI(制度革命党)が政権交代後も主要政党であり続け、2009年中間選挙で第一党に返り咲き、2012年大統領選挙で政権復帰の可能性が濃厚となったのはなぜかを、党の組織力や選挙戦略に焦点を当て、他の主要政党(国民行動党PAN、民主革命党PRD)と比較しつつ明らかにした。成果は「メキシコ2011年:政権奪還を目指すPRI、阻止を試みるPANとPRD」『ラテンアメリカ時報』として発表した(2011年7月)。 第三に、比較対象をヘゲモニー政党制の形成期にあるカンボジアと、突然の崩壊が起こったエジプトまで拡大し、カンボジアの人民党体制を研究している山田裕史(日本学術振興会特別研究員PD、東京大学)とエジプトの国民民主党(NDP)体制を研究している金谷美紗(上智大学アジア文化研究所共同研究員)を研究協力者として現地調査に派遣した。調査後には報告会を開催し(2012年3月)、カンボジアにおけるヘゲモニー政党制生成のさらなる進行、エジプトにおける政党制の再編過程など、最新の現地情報をもとに検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大半の事例分析はおおむね予定通り進んでいるが、昨年度セネガルへの海外調査を見合わせたこと(選挙前の暴動の発生と治安悪化による)、および前述した新たな検討課題の発見の影響で、比較分析と分析結果のとりまとめに当初の計画より時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年となる24年度は、各事例の時系列の分析を完成させるとともに、事例間の比較と分析結果のとりまとめを行う。とりわけ議論の見直しが必要となったヘゲモニー政党制の形成期に関して、追加資料を収集しつつ再分析を行い、前年度の遅れを取り戻すべく努力する。 対象事例のうちセネガルは、海外調査の実施が難しくなったため、文献調査(とくにフランス語文献の収集と分析)に切り替えて時系列分析を進める。今年選挙が予定されているメキシコについては、研究協力者を現地に派遣して現地情報の充実を図りながら、選挙をめぐる情勢の分析を深める。
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