2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530135
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
永井 健晴 大東文化大学, 法学部, 教授 (10172488)
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Keywords | プラトン『国家』 / ヘーゲル『法権利の哲学』 / 正義 / 自由 / 理性 / 意思 / 市民社会と国家 / 自己立法 |
Research Abstract |
平成22年度(22年3月~23年4月)においては、研究課題「正義と自律-プラトンとヘーゲルの政治哲学」に関して、以下の研究成果を達成した。 1.M.B.フォスター著『プラトンとヘーゲルの政治哲学』(オクスフォード、1935年)の邦訳に解題と関連論文を付して出版した(平成22年8月、風行社)。この著作は、古代ギリシア哲学とユダヤ・キリスト教世界観の思惟パラダイムに照らして、プラトンとヘーゲルの国家モデル及び両者の関係を原理的かつ精細に捉え返していた、きわめてユニークかつ本質的な西欧政治哲学に関する仕事である。 2.ヘルマン・ヘラー著『ヘーゲルとドイツにおける国民的権力国家思想』(キール、1921年)の邦訳の一部を『大東法学』(第20巻、第1号及び第2号)において公表した。このテクストは、ヘラーが19世紀末以降の帝国主義的時代状況を背景にして、フランス革命とナポレオン戦争の時代において成立した初期ヘーゲルの「権力国家思想」の政治理論史的意義(啓蒙思想と有機体論をともに揚棄しようとする試み)を際立たせている。 3.C.ソーンヒル『ドイツ政治哲学-法の形而上学』(ロンドン、2007年)の翻訳と解題に取り組んだ(平成23年夏に風行社から公刊予定)。このテクストは、宗教改革の時代から20世紀末に至るまで、ドイツにおける「法権利の実定化(法の妥当性と実定性の関係の自覚化)あるいは「ポスト形而上学」という問題を一貫して跡付けている、類書を絶する仕事である。平成23年3月、グラスゴー大学を訪れ、著者と意見交換した。 4.以上を踏まえ、プラトンについては『ポリティコス』篇における「政治的判断力」について、ヘーゲルについてはその国家論へのとりわけマキアヴェッリ、スピノザ、ライプニッツのそれの影響関係に関する考察を行なっている。
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