2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530135
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
永井 健晴 大東文化大学, 法学部, 教授 (10172488)
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Keywords | 正義(ディカイオン) / 自律(自由) / 国家理性と主権 / 権力と法の正当化 / 国家と人格 / 法の自己定立 / 法の実定化 / 憲政秩序(立憲主義) |
Research Abstract |
平成23年度中の具体的研究成果以下のとおりである。 (1)クリス・ソーンヒル『ドイツ政治哲学一法の形而上学』の翻訳出版。このテクストは「主知主義」と「主意主義」の対立軸を基礎にして、宗教改革期から現代に至るドイツの政治思想・法思想と、その背景にあった紆余曲折のドイツ近現代国家形成史の特殊性とを描出している。このテクストの主題に関しては、「<形而上学以後>の不可能性と<国家の終焉>の終焉」と題した解題を付した。 (2)ヘルマン・ヘラー『ヘーゲルとドイツにおける国民的権力国家思想』の翻訳、(3)、(4)。このテクストは、初期ヘーゲルにおける「国民的権力国家思想」の成立について扱ったヘラーの教授紙資格論文であるが、後期ヘーゲル政治哲学(『法権利の哲学』)の立論の前提となっているかれの初期政治思想の核にあるものを的確に描出しているとともに、ヘラー自身の「国家学」形成の基礎にある思惟形式をも示している。 さて、「古典古代」国家論としてのプラトン政治哲学(『国家』篇)における「国家」「正義」「徳」などについての議論を、現代社会学の「構造」「機能」「社会的分業」「システム」などのカテゴリーで捉え返しうるとすれば、「西欧近代」国家論としてのヘーゲル政治哲学(『法権利の哲学』)における「法権利=正義」概念に関する叙述の展開についても同様のことが言えよう。本研究は、両政治哲学の差異性と同一性について、「正義」と「自律」、あるいは「理性」と「自由」の関係を軸にして理解することを試みているが、現在、この観点から、プラトンに関しては『政治家』篇や『法律』篇の内在的読解を、ヘーゲルに関しては、一方のマキアヴェッリやスピノザのリパブリカニズム、他方のプーフェンドルフやライプニッツなどのドイツ法思想(国法学)の影響関係についての研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2011年11月、前法学部長が病気のため任期半ばで辞任したので、残任期間の法学部長を引き受けることになった。このため内外の諸会議(月平均10回)の出席だけでなく、学部、大学院、ロースクールの授業担当(計6コマ)もしているので、研究に割ける時間が極度に少なくなり、大幅に研究計画の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究テーマの大きさや上記の理由により、研究計画の進捗が大いに遅れているが、夏期休暇などを集中的かつ効率的に利用して、研究計画の実現に邁進したい。ただ、いずれにしても、実現期日は当初予期のよりは1~2年の遅れを見込んでいる。
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