2011 Fiscal Year Annual Research Report
公共空間の市民的創造に関する理論的・歴史的・実証的研究
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22530143
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
今里 滋 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (30168512)
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Keywords | 政治理論 / 公共空間 |
Research Abstract |
本研究は、大きく、理論的研究と実証的・実態調査的研究の二つの軸によって形成され、制御されることを前提に進めてきたが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災とその後の福島原発の事故を受け、こうした歴史的事象を理論軸と実証軸の双方に反映させることとした。そこで、まず、理論軸では、相互扶助の経済システムないしその理論として、近時、中南米やスペイン、イタリア等の中南米諸国で発展しつつある連帯経済に新たに焦点を合わせることにした。そこで、連帯経済関係の文献資料を博捜渉猟し、その解読を進めたほか、わが国でも有数の連帯経済の研究者である広田裕之氏(現スペイン・バレンシア大学院)と共同研究を開始し、同氏とともに夏にブラジルはサンパウロを中心に実地調査を行った。その結果、ルラ政権以来の連帯経済的政策の実態や連帯経済を支える市民社会の活動に関して知見を広めることができた。さらに、連帯経済とも関連する社会的起業が欧米でも盛んになっている現状を踏まえ、ハーバード大学で開催された世界社会起業フォーラムに参加して情報収集や意見交換を行ったほか、ニューヨーク市を中心としてTFA(Teach for America)等の代表的社会起業の現場を実地調査し、現に効果的なソーシャル・イノベーションを起こしている公共空間が市民的に創造されている状況について、考究を進めた。さらに、自らも、ソーシャル・イノベーション型の公共空間の実践を進めるべく、同志社大学町家キャンパス江湖館において、福島県三春町支援事業を行ったほか、江湖館蔵2階にインターネット放送スタジオを設け、大学院生らとともに、東北被災地支援を目的としたメディア公共空間を創設し、運営した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、政治的公共空間に限定した理論と実践の二軸推進体制を取っていたが、3.11東日本大震災とそれに続く福島原発事故を踏まえ、経済的公共空間の理論的考察と社会実験も含めた実践的研究を加えることにしたためである。このことで、本研究の射程が大きく拡大し、より社会的有意性のあるものとなったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
経済的公共空間の考察と社会実験を含めた実践的研究も、これまでの研究計画に加えて推進する。経済的公共空間の研究においては、連帯経済の理論と実践の考察が不可欠になるため、平成24年夏にスペイン、ポルトガル、フランス、イタリア等のラテン系諸国を実地調査し、現地の研究者や実践家と意見交換、共同研究、連帯経済の具体的実践事例の調査等を行う予定である。そのための問題点としては、平成24年度の科学研究費では旅費が不足するため、自費を工面し、充実した調査ができるように努力する所存である。また、スペインはバレンシア大学大学院連帯経済の研究者とインターネットを介した対面型国際研究会を設置し、大学院生等にも参加を推奨して、ネット上での対話型研究を試行する。
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