2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 善康 大阪大学, 社会経済研究所, フェロー (70130763)
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Keywords | 賃金調整 / 長期不況 / 失業 / 資産保有願望 / 貨幣保有願望 |
Research Abstract |
はじめに、動学的なマクロ経済の枠組みに公正賃金仮説を適用し、失業率に依存しながら時間を追ってスラギッシュに変化する貨幣賃金の動きを明らかにした。そこでは、過去に払われていた貨幣賃金と現在の失業状況に照らし、自分にとって公正であると思われる賃金を形成し、賃金がそれより低ければ生産性が大きく落ちるがそれ以上なら一生懸命働く既存の労働者と、白紙の状態で入社してくる新規労働者の存在する経済を考えた。その上で、一定確率で退職する既存労働者に代わり需要状況に応じて新規労働者が採用される場合、公正賃金は、その時々の失業率に依存しながら徐々に変化していくことが明らかになった。さらに、企業の最適行動から、こうした公正賃金がそのまま現実の貨幣賃金になることが示された。 次に、スラギッシュな賃金調整を前提に、各個人が他人の経済状態との比較によって効用を感じる場合(いわゆるステータス仮説)、比較の対象が何であるかによって、経済の動きがどのように変わるかを分析した。具体的には、社会の平均的な消費と自分の消費との差、平均的な実物資本保有量と自分との差、平均的な貨幣保有量と自分との差によって効用を感じる個人を考え、消費の差を気にする経済では完全雇用が、実物資本保有量の差を気にする経済では永続的な経済成長が、貨幣保有量の差を気にする経済では永続的な不況が発生することを明らかにした。その結果、一見まったく違って見える完全雇用、経済成長、不況という3つの状態が、単に人々の欲望の対象が違うことによって発生するものとして、統一的に導かれた。
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Research Products
(6 results)