2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530178
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 善康 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70130763)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 一時不況 / 長期不況 / 失業 / 金融緩和 / 地位選好 |
Research Abstract |
1)動学マクロ理論に基づく長期不況理論をもとに、有効需要と消費との関係を求めた。この関係は、伝統的ケインジアンモデルでは所得が入れば消費に回すという視点で論じられてきたが、本研究では経済全体の需要が雇用を決め、それが賃金と物価の変化率を決め、消費の時点間代替を通して現在の消費を決めるという構造を持っている。このように、同じ所得と消費との関係でもその意味はまったく異なるが、これを一般均衡の枠組みに組み入れることにより、形式上、有効需要が消費を決めそれが総所得を決めるという従来の所得分析と、似た構造を持った分析手法を確立することができた。その結果、従来のケインズ的乗数効果分析とほぼ同等の簡潔さを持ちながら、動学的最適化に基づいた新たな分析手法が確立された。さらに、その中に含まれる各パラメーターが、現実の経済政策にそれぞれ明確に対応する定式化が可能になった。 2)上記の方法を現実の政策に応用し、金融緩和の効果、インフレターゲット政策の効果、雇用を生み出す財政支出拡大と所得移転を目指した財政支出拡大の効果の違い、再生可能エネルギーへの転換を行い、その資金を財政負担で賄う場合と電気料金値上げで賄う場合の景気への効果の違い、などを分析した。たとえば、新たな分析手法から求められるベースマネーの量と物価あるいはGDPとの関係とは、潜在的生産能力の少ない段階では従来の比例的関係が、また生産能力が高い成熟段階の経済ではその関係が消滅する、というものである。このことを、日米英のデータを使って確かめたところ、ほぼ理論通りの結果が観察された。 3)本理論の国際経済への拡張について、いくつかの基礎的知見を得た。その中には、不況と為替レートとの関係や景気の国際波及を分析する理論的枠組みの構築などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
簡潔な所得分析手法の確立と本理論の各種経済政策への応用という、当初の研究実施計画で示していた目標がすべて達成されている。さらに、国際経済への拡張への見通しという、当初の計画を超えた進展も見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ計画通りに研究が進展しており、今後の研究進展の方向も見えている。そのため、今後もこれまでの研究ペースを維持するように、最大限努力する。 特に、研究計画を大幅に変更する必要性は感じていない。
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Research Products
(6 results)