2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530182
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
寺地 伸二 山口大学, 経済学部, 教授 (10263758)
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Keywords | 利他性 / 企業の社会的責任 |
Research Abstract |
本研究は、利他的行動を考慮に入れて、非市場型メカニズムを重視した、新たな企業理論の構築を目指すものであるとりわけ、次の二つの問題を明らかにする。 経営者とステークホルダーとの互いに相補性をともなうゲームを考え、正の互恵性が両者の間で創発する非市場型メカニズムを明らかにすること。 経営者とステークホルダー両方の利他的行動が持続可能となるための制度的条件を明らかにする。社会規範というインフォーマルな制度に注目し、社会規範と各経済主体の選好の共進化を理論的に明示し、またモデルの数値解析を行うこと。 企業のCSR活動への利他的行動からのアプローチとして、経営者とステークホルダーとの相補性をともなうゲームを考えた。ジョージ・アカロフは、企業と労働者の関係を、企業の好意(高い賃金)にたいして労働者が好意(高い努力水準)で応えるという、贈与交換モデルで分析した。本研究は、CSR活動モデルを、経営者とステークホルダーの相補性を重視しながら拡張をめざした。ステークホルダーの好意((CSR活動への高い評価)にたいして経営者が好意(CSR活動)で応えるかたちで、正の互恵性が当事者間に創発する非市場型メカニズムを理論的に考察をおこなった。 利他的行動を考慮した新しい企業理論の構築により、従来の企業モデルのように金銭利潤のみを求めるばかりでなく、利潤最大化行動以外に非金銭的な倫理的行動規範をともなう経営者の行動が分析が可能になる。利潤最大化行動と倫理的行動とのトレードオフに縛られない経済分析の枠組みにおいて、CSR活動を行う企業が市場圧力によって淘汰されないことが示される。 利他的行動が経済活動として生じることを内生的に分析することを可能にする。経済主体には、利己的な動機と利他的な動機が共存している。相補性をともなうゲームとして定式化することで、利他的な動機に基づく行動が創発する非市場型メカニズムの分析が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究論文の発表は順調に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
経営者とステークホルダーとの間に創発した正の互恵性が、持続可能となるための制度的条件を動学的モデルに基づいて考察する。社会規範というインフォーマルな制度に注目し、経営者とステークホルダーとの関係を社会規範の進化モデルにおいて定式化する。両者間で信頼関係が持続可能となるための条件を考察しながら、社会規範と各経済主体の選好の共進化を理論的に明示する。またモデルの数値解析を行うことによって、利他的行動を考慮した企業の動学理論の完成をめざす。
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Research Products
(3 results)