2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530184
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
島田 章 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60196475)
|
Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際労働移動 |
Research Abstract |
利他主義が潜在的移民の労働移動の決定と送金額に及ぼす影響を調べ、利他主義が予想送金額をどのように変化させるかを明らかにした。従来の研究は、利他主義が労働移動に関する決定に及ぼす影響に十分な注意を払わなかった。労働移動に費用がかからない場合、潜在的移民が利他的であるほど予想送金額は大きいが、労働移動に費用がかかる場合、潜在的移民が利他的であっても予想送金額が大きくなるとは限らない。 教育を需要するために教育市場で成立する価格を支払わなければならない場合に、生まれつきの能力の異なる労働者の人的資本形成が、労働移動の可能性の変化によってどのように影響を受けるかを調べた。従来の研究は、労働者が同質で教育を需要するために金銭的な費用が存在しないと仮定した。教育の供給が小さい場合、労働移動の可能性の上昇は、平均的な人的資本ストックを減少させる。言い換えればbrain drainが生ずる。この結果は、労働移動の可能性の上昇が人的資本形成を促進する、すなわちbrain gainをもたらす、という従来の結果を覆すものである。 教育市場と世代間依存を仮定して、労働移動の可能性が人的資本形成に及ぼす影響を動学的に調べた。従来の研究でも、動学モデルを用いて労働移動の可能性が人的資本形成に及ぼす影響を調べているが、教育価格や労働者の予算制約に十分な注意を払わなかった。教育が価格に関して弾力的に供給されるならば、労働移動の可能性の上昇は人的資本を増加させるが、教育が価格に関して非弾力的に供給されるならば、労働移動の可能性の上昇は人的資本を減少させる。 さらに国際労働移動が児童労働をつうじて児童の人的資本形成に及ぼす影響を分析するためのモデルを構築した。従来のモデルとは異なり、親の外国への移動が子供の貨幣的収入をもたらさない労働をつうじて、人的資本形成に及ぼす影響が調べられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで国際学会で10回、国内学会で1回発表を行ったことより、研究の目的としていた問題がより鮮明になった。またこれにより研究の目的としていた問題を取り扱った論文が審査制の国際雑誌に3編掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
国際労働移動の一般的な理論を研究するとともに、国際労働移動の理論を児童労働や国内労働移動に応用し、関連する経済問題を分析するための理論を構築する。
|