2013 Fiscal Year Annual Research Report
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22530184
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
島田 章 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60196475)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 国際労働移動 / 人的資本形成 / 教育市場 / 賃金格差 / 頭脳流失(brain drain) / 頭脳流入(brain gain) |
Research Abstract |
まず、労働移動の可能性が労働の送り出し国の教育需要や人的資本形成に及ぼす影響を調べた。そのために労働者は予算制約のもとで教育の金銭的費用を個人的に支払わなければならないと仮定した。そして外国で働ける可能性が高くなると、教育を需要する労働者の数が増加するが、同時に生じる教育価格の上昇により、個々の労働者の教育需要が減少することがわかった。さらにもし教育の供給が十分でなければ、後者の効果が優り、労働移動の可能性の上昇は平均的な人的資本ストックの水準を低下させることがわかった。この結果は、労働移動の可能性の上昇が人的資本の形成を促進するという通常の結論とは逆であり、労働の受け入れ国の受け入れ抑制政策による労働移動の可能性の低下がかならずしも人的資本形成にとって有害でないことを含意している。 次に、賃金格差と国際労働移動をつうじた人的資本形成の関係を調べた。具体的には労働の送り出し国と労働の受け入れ国それぞれに熟練労働者と不熟練労働者が存在し、これらの労働者のあいたでの賃金格差が2国で異なると仮定し、労働移動の可能性が労働の送り出し国の人的資本形成にどのような影響を及ぼすかを明らかにしようとした。そして労働の受け入れ国は労働移動の可能性により、brain drain(平均的な人的資本ストックの減少)とbrain gain(平均的な人的資本ストックの増加)が同時に生じることを示した。さらに労働の受け入れ国の賃金格差が送り出し国のそれよりも大きければ(十分小さければ)、熟練労働者がbrain gain(brain drain)を経験し不熟練労働者がbrain drain(brain gain)を経験することがわかった。この結果は、労働の送り出し国の政府が労働者の外国への移動を奨励しようとするならば、受け入れ国との賃金格差の違いを考慮しなければならないことを含意している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで国際学会で13回、国内学会で1回発表を行ったことにより、研究の目的としていた問題がより鮮明になった。またこれにより研究の目的としていた問題を取り扱った論文が審査制の国際雑誌に5編掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
国際労働移動の一般的な理論を研究するとともに、国際労働移動の理論を児童労働や国内労働移動に応用し、関連する経済問題を分析するための理論を構築する。
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