2011 Fiscal Year Annual Research Report
人口高齢化と産業構造-産業のサービス化,高齢者就業,および年金改革-
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22530190
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
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Keywords | 人口高齢化 / 産業のサービス化 / 高齢者就業 / 所得格差 / 年金改革 |
Research Abstract |
"Healthy life expectancy,dynamic efficiency,and aPareto-improving subsidy for long-termcare"を日本応用経済学会,応用地域学会で報告した(6月,12月).論文では,公的介護(介護サービス産業への補助金政策)の導入により将来世代を含めた各世代の経済厚生がどのように影響を受けるのかを分析している.主な結論は次の2つである.第1に,長期均衡が動学的非効率であるとき,すべての世代の厚生を改善するような補助率が存在する.第2に,補助率の上限は健康寿命が延びるにつれて低下する,というものである.本稿の結論は,健康寿命が延びるような状況であっても公的介護が人生の質を改善する可能性があること,しかも,現行世代のみならず移行期を含めた将来世代の人生の質をも改善する可能性があることを示唆している.また,補助率の上限と健康寿命の関係を陽表的に導出しているという点で政策的意義を持っている.研究成果は,同志社大学ライフリスク研究センターのディスカッションペーパーとして公開されている.論文は投稿に向け現在改訂中である. 早稲田大学で開催された政治経済学に関する国際カンファレンスでの報告論文の要旨を上梓した(田中愛治監修,小西秀樹編「政治経済学の新潮流」第6章人口高齢化と再分配政策:社会的対立効果の理論分析,勁草書房).論文の詳細は,同志社大学ライフリスク研究センターのディスカッションペーパーとして公開されている("Preferences for redistribution in an aging economy").論文は投稿に向け現在改訂中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のキーワードは,高齢者就業,産業のサービス化,社会保障改革,所得格差の4つである.初年度は高齢者就業と産業のサービス化に,2年目である本年度は公的介護の制度改革に焦点を当てて分析した.次年度は最後のキーワードである所得格差について研究を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
所得格差を分析する際,次の2つの視点が重要であろう.第1に,何が格差の源泉なのか,第2に,分析対象が世代内の格差なのかあるいは世代間の格差なのかという点である.格差の源泉についてはこれまで先天的要因および遺産という私的移転を想定して分析を試みたことがある.現在は子から親への移転(gift)が格差の世代間伝播の要因となり得るのではないかと考え,理論モデルを構築中である.第2の点に関しては,2つを同時に解析的に分析可能かどうか検討中である.
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