2012 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス古典派経済学における企業像とその経営理論的考察
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22530198
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
村田 和博 埼玉学園大学, 経営学部, 教授 (00300567)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 経済学史 / 経営学史 / 古典派経済学 |
Research Abstract |
当該年度においては、まず本研究にかかわる4年間の申請期間の前半2年間の研究成果を、2012年5月の開催された経済学史学会第76回全国大会(小樽商科大学)において、「古典派経済学における経営組織論の特質―分業と協働の観点から―」というテーマで報告した。本報告では、アダム・スミス、C.バベッジ、E.G.ウェイクフィールド、及びJ.S.ミルの経営組織分析に焦点を当て、その各々の経営組織論的特質を示した。さらに、現代経営学から見たときの古典派経済学期の経営組織論の特質を、①スミスからバベッジに至るまでに、熟練形成の効率化・知識の専門化、機械の発明と機械的分業の効果、規模の経済、段取り替えの時間の節約、経済的スタッフィング、及び計画のグレシャムの法則の回避が分業の利益として認識された、②ウェイクフィールドとミルは分業を包括する概念として協働を捉えるとともに、単純な協働を認識していた、③協働概念は読み取れるが、その一方で組織間関係や戦略的協働への広がりは見られない、④バーナード理論と比べて、組織を統制する管理職能に関する記述が不足している、の四点として紹介した。 さらに、論文「A.スミスとC.バベッジの人的資源管理」(埼玉学園大学紀要 経営学部篇 第12号)では、スミスについてはモチベーション、職業間での賃金の違いと人的資源管理との関係、及び能力開発の観点から論述し、バベッジについては分業の利益としての技術習得の容易化、及び労働の有効活用の観点から論述した。そのうえで、モチベーションの方法として、バベッジは賃金形態に、一方スミスは物質的報酬だけでなく名誉などの非物質的報酬を含む報酬全体に関心を持ったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにアダム・スミスからJ.S.ミルに至る古典派経済学期に形成された経営組織論、及び人的資源管理論に関する学史的考察のうちのおおよそを研究し終えた。平成25年度が本研究期間の最終年度になるが、平成25年度末までに研究成果報告書を提出できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の前半では、ロバート・オウエンの『社会に関する新見解』、『ラナーク州への報告』、「社会制度論」など、彼の代表的著作に依拠しつつ、彼の提示する労働者の困窮改善策を解明するとともに、その経営学的意義と問題点を指摘する。そして、その研究成果を大学紀要に掲載するとともに、報告の機会が得られれば、関連学会においてその研究成果を報告する。 また、本年度が本研究課題の研究期間の最終年度になるため、本年度の後半では、本研究課題の実績をまとめた実績報告書を作成し、研究成果を広く公開することとしたい。
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Research Products
(2 results)