2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530204
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 真吾 北海道大学, 大学院・公共政策学連携研究部, 准教授 (10326283)
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Keywords | 構造推定 / 入札モデル / 電力自由化 |
Research Abstract |
本年度の研究では,「小売電力市場の非対称入札モデルに関する構造推定」(共著)を作成し,学会報告およびセミナー報告を行った.この論文は,入札行動の定式化を行った上で仮想的な政策シミュレーションを行うことができる構造的な枠組みを提示し,電力小売市場のデータを用いて定量的な分析を行うという研究課題の中心テーマに沿ったものである.学術的な特徴としては,標準的な入札モデルで考慮される情報の非対称性に加え,二つの意味での非対称性を取り込むことで電力小売市場の実態を捉えようとしている点にある.第一に,既存事業者(各地域の電力会社)は常に入札へ参加するのに対し,新規参入者(特定規模電気事業者)は利潤機会があるときのみ参加する形になっている.第二に,第一の点とも関連するが,新規参入者が入札に応じるのは特定の案件であることから,入札参加者間で費用構造に非対称性があると推測できることにある.これらの点を考慮した理論モデルを提示し,実際のデータから間接推定(indirectinference)と呼ばれる方法論を用いて,既存事業者・新規参入者の費用構造を規定するパラメータを推定した.さらに推定した結果を用いて,現状では自由化部門において比較的小規模な高圧部門において,既存事業者が大きな利潤をあげていることを確認したうえで,新規参入促進のための優遇を含めた競争促進的な政策シミュレーションを実行した.その結果,競争圧力により既存業者がより効率的に入札するよう作用することを通じて,資源配分上の非効率(相対的に高費用業者が落札してしまうこと)の発生確率の低下と社会的な厚生(消費者余剰+入札参加者の利潤の総計)の向上を同時に達成する可能性があることを示した.今後は,学会・セミナー等で指摘された問題を改善しつつ,論文の改訂を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題の中心テーマである,入札モデルの構造推定の枠組みを提示し,実際のデータへの適用することが可能であることを示し,一定の成果を出したという意味で順調に進展している.本稿のような構造推定には,非常に時間集約的な計算が必要であるが,その点も推定プログラムの並列化処理によって実用的な時間内に計算が終了するよう大幅に改善させられることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はよりモデルの予測力(当てはまり)を向上させること,昨今の電力市場を取り巻く状況変化に則した政策シミュレーションの提示を行うことが課題として残っている.
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Research Products
(2 results)