2010 Fiscal Year Annual Research Report
寡占的競争下の先渡し市場・スポット市場を考慮した排出権取引制度の研究
Project/Area Number |
22530220
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (10377137)
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Keywords | 環境政策 / 排出権取引 / 寡占競争 / 先渡し市場 / スポット市場 |
Research Abstract |
温室効果ガスを効率的に抑制するための排出権取引の研究では、先渡し市場の機能に関する検討が従来十分行われておらず、有意な政策的含意が得られていない。本年度の研究では、財取引に関して先渡し市場が存在する場合を考え、寡占競争下の二段階の内生的モデルを構築した。具体的には、以下のモデルを検討した。時間の流れとしては、先渡し市場は第一期、スポット市場は第二期となる。この二段階のモデルを後方から解いた。まず、財取引と排出権取引の両方に関して、スポット市場における均衡条件を相補性条件により表現し、次に、先渡し市場における各企業の行動をモデル化した。各企業は、スポット市場の均衡を予想しながら、利潤の最大化を図る。換言すると、各企業は、スポット市場の均衡条件を制約条件とした最適化問題に直面する。この問題は、数理計画法の観点からは、均衡制約をもつ数理計画問題(MPEC:Mathematical Program with Equilibrium Constraints)として位置づけることができる。さらに、各企業の利潤最大化のもとで得られる均衡を求める問題は、均衡制約をもつ均衡問題(EPEC:Equilibrium Problem with Equilibrium Constraints)として定式化することができる。これらの問題は複雑であり解くのが困難であるが、本年度は、需要や費用に関して線形の関数を仮定して、解析的な分析を試みた。その結果、温室効果ガスの排出率の高い企業は、先渡し市場を利用して製品価格をつり上げるインセンティブを持ちうることが示唆された。また、温室効果ガスの排出率の低い企業に初期の排出権をより多く配分すると、製品価格と排出権価格両方の低下をもたらす可能性があることが示唆された。
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Research Products
(3 results)