2011 Fiscal Year Annual Research Report
寡占的競争下の先渡し市場・スポット市場を考慮した排出権取引制度の研究
Project/Area Number |
22530220
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (10377137)
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Keywords | 環境政策 / 排出権取引 / 寡占競争 / 先渡し市場 / スポット市場 |
Research Abstract |
本年度は、財取引市場と排出権取引市場の基本モデルを、「一産業モデル」から「複数産業モデル」へ拡張・発展させた。この拡張モデルでは、それぞれ異なる財を生産する複数の産業を考え、一つは寡占競争、他方は完全競争が行われている状況を想定した。そして、寡占産業の企業が財取引市場と排出権取引市場の両方で市場支配力を有する場合について、寡占企業の戦略的行動と産業間の相互作用の分析を行った。特に、排出権の初期配分の仕方が、企業間の戦略的行動を通じて、両産業の均衡にどのような影響を与えるのか詳細に分析した。理論分析から得られた主要な結果は次のとおりである。グランドファザリング方式のもとで、寡占産業の企業への排出権の初期配分を増加させると、これらの企業の生産量を増大させる。そして、温室効果ガスの排出量の多い寡占企業(e.g.石炭中心の発電会社)から排出量の少ない寡占企業(e.g.天然ガス中心の発電会社)に排出権を再配分した場合、排出率に関する一定の条件のもとでは、(1)寡占産業の財価格、(2)完全競争産業の財価格、(3)排出権価格のすべてを同時に低下させることができることが示された。理論分析の結果は、数値シミュレーションでも確認された。さらに、初期の排出権の最適配分の仕方についても、・社会厚生の観点から議論した。本研究の結果は、規制当局が排出権を配分する際には、財取引市場と排出権取引市場の相互作用、寡占産業と完全競争産業の相互作用に十分に注意しなければならないことを示唆している。 本年度は、電力産業シミュレーション分析のための基礎研究として、価格変化に対して需要家がどのように電力消費行動を変えるかについて、選好表明法による分析も行った。需要家へのアンケート調査をもとにしたコンジョイント分析を行い、価格に対する電力消費の感度を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画に沿って、分析用の基本モデルを一産業モデルから複数産業モデルへ拡張・発展させた。そして、排出権の初期配分の仕方が寡占企業の戦略的行動を通じてどのように均衡に影響を及ぼすのかを明らかにし、研究目的を着実に達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、研究目的・研究計画に沿って順調に研究を進め、成果を出している。特にこれまで理論分析に重点を置いてモデル構築・分析を行ってきた。今後は、構築した理論モデルを土台として、現実の具体的な市場データを用いた実証・シミュレーション分析をさらに拡充していく予定である。実際、平成24年度は、米国カリフォルニア州の電力市場の需要サイド・供給サイド両方の実データを用いて、実証・シミュレーション分析を行い、さらに豊かな政策的含意を引き出す予定である。
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Research Products
(4 results)