2012 Fiscal Year Annual Research Report
寡占的競争下の先渡し市場・スポット市場を考慮した排出権取引制度の研究
Project/Area Number |
22530220
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (10377137)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境政策 / 排出権取引 / 寡占競争 / 先渡し市場 / スポット市場 |
Research Abstract |
本年度は、理論モデル(排出権取引を含む寡占競争下における先渡し市場・スポット市場の二期間モデル)をさらに深化させつつ、さらに米国カリフォルニア州の現実の電力市場データを用いて実証・シミュレーション分析を行った。具体的には、まず供給サイドとして、カリフォルニア州の主要な電力供給者に着目して、燃料費のデータなどをもとに発電の限界費用を推定した。これらの供給者のCO2排出量に関しては、米国のContinuous Emissions Monitoring System (CEMS)から入手したデータを用いた。次に需要サイドについては、カリフォルニア州の気象条件や季節的要素も考慮して、回帰分析により需要曲線を推定した。特に、年間をピークやオフピークなど10ほどの期間ブロックに分けてそれぞれの期間の需要曲線を導出した。こうして得られたデータを用いて、排出権取引を含む寡占競争下における先渡し市場・スポット市場の二期間モデルに基づき、年間を通じたシミュレーション分析を実施した。本研究により得られた主要な結果は以下のとおりである。まず、理論分析から、CO2の排出量の多い電力会社(石炭中心の発電会社等)よりも排出量の少ない電力会社(天然ガス中心の発電会社等)に排出権をより多く配分した場合、均衡において合計発電量が増大し電力価格が低下すること、さらには排出権価格も同時に低下することを示した。背後にあるメカニズムとしては、排出権配分の変化によりCO2排出量の少ない電力会社が先渡し市場にコミットする割合が増えることの結果であることを明らかにした。次に、カリフォルニア州電力市場のシミュレーション分析を行い、CO2排出量の多い電力会社から排出量の少ない電力会社へと全排出権の6%分を再配分した場合、電力会社間の戦略的な先渡し取引を通じて電力価格が4%、排出権価格が14%低下することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画に沿って、理論モデル(排出権取引を含む寡占競争下における先渡し市場・スポット市場の二期間モデル)をさらに深化させつつ、さらに米国カリフォルニア州電力市場の現実の市場データを用いて実証・シミュレーション分析を行い、研究目的を着実に達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、研究目的・研究計画に沿って順調に研究を進め、成果を出している。最終年度である25年度には、2つの方向で研究を実施する。第一は、これまでに構築した理論モデルとそれをもとにした現実の実証・シミュレーション分析から得られた知見を基礎に、望ましい環境規制のフレームワークを確立することである。第二は、これまでの理論モデルと実証・シミュレーション分析を土台として、さらなる環境政策のオプションを考慮したモデルとシミュレーションの拡張を試みることである。これにより、環境政策のさらに豊かな含意を得ることが期待される。
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