2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530221
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
芹澤 伸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90303106)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇田 成 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (60242046)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 文化の多様性 / 文化政策 / 文化政策 / 習慣形成 / 知的財産 |
Research Abstract |
消費者の習慣的な消費行動が企業の生産活動しいては産業の市場成果にさまざまな影響を与えるが、消費の外部性が存在すると仮定するなら、文化の多様性を維持するための公共政策のあり方は「外部性の有無によって」変わってくる。習慣形成を「addiction(前期消費量が次期消費に正の効果をもたらす)」、あるいは「habit(前期消費が多いと心のストックが蓄積され、次期消費に負の効果をもたらす)」の2つと仮定し、消費者個人の消費の外部性がもたらす習慣形成のモデル化を試みてきた。消費の外部性と産業構造の関係を明らかにしなくてはならず、我々がこれまで開発してきた理論モデルを発展させた。特に本年度は、これまで理論モデルでは明示的に分析されてこなかった「産業」の構造、即ち、動的な消費者の消費行動と産業構造がどのように関連するか、という問題にスポットライトをあて、文化的財に対する公共政策のあり方を分析可能とする一般均衡モデルを構築し、Serizawa and Wakita,"Endogenous category-wide habit formation"(APTS 2012、Singapore) 、を発表した。具体的には、消費者が産業固有の異時点間消費外部性をもつと仮定して、消費者が消費を平準化する傾向を持つケース(負の消費外部性)では企業への一括補助が、一方嗜癖があり中毒的に消費する性向(正の消費外部性)がある場合には課税が、それぞれ厚生を向上させることを明らかにした。従来、文化的財に関するモデルでは消費性向について標準的といえない仮定が設けられるが、本モデルの諸仮定は独占競争モデルやマクロ経済学の習慣消費形成モデルで一般的に採用されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に沿って、「消費の外部性」を仮定した不完全競争下、国際的に取引される文化的財の生産における企業の行動と最適な公共政策のあり方を分析した。特に本年度は、これまで理論モデルでは明示的に分析されてこなかった「産業」の構造、即ち、動的な消費者の消費行動と産業構造がどのように関連するか、という問題にスポットライトをあて、文化的財に対する公共政策のあり方を分析可能とする一般均衡モデル(Serizawa and Wakita, 2012)を構築した。消費者が産業固有の異時点間消費外部性をもつと仮定して、消費者が消費を平準化する傾向を持つケース(負の消費外部性)では企業への一括補助が、一方嗜癖があり中毒的に消費する性向(正の消費外部性)がある場合には課税が、それぞれ厚生を向上させることを明らかにした。文化的財の保護政策に関する従来のモデルでは消費性向について標準的といえない仮定が設けられてきたが、本モデルの諸仮定は独占競争モデルやマクロ経済学の習慣消費形成モデルで一般的に採用されるものである。特に、本モデルは産業を明示的に組み入れたことが新しい。上述した発表論文は現在国際雑誌に投稿中である。 平成24年度は主として「企業の戦略的行動と貿易政策」に注目した研究内容であり、当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度であるため、芹澤が総括者となって本研究をまとめる。 と同時に、今年度発表した消費の外部性と産業構造に注目した論文を発展させるべく、展開論文にも着手しており、内外の学会で研究成果として発表し、また英文雑誌に投稿する予定である。 知的財産には、正の外部性、即ち、技術や経営ノウハウ等の知的財産の国際取引によって知識や文化がスピルオーバー(拡散)し、新たな知識や産業の創出を促進する効果、がある。他方、産業のサービス化で知的財産の扱いが文化的背景に基づく各国の制度の違いで複雑になっているが、直接投資(FDI)においても企業の考え方の違いが戦略の違いとして現れる。たとえば「知的財産=のれん」というように戦略変数として企業の投資行動に反映される。今後は後者の視点に立脚し、消費の外部性があるとき、国際寡占市場で活動する企業の投資戦略や政府の市場へのかかわり方がどうあるべきかも含めて、規範的な政策提言を行いたい。
|
Research Products
(2 results)