2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530235
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
車井 浩子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (70275296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 由紀子 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (80336825)
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Keywords | 若年労働市場 / 転職行動 / 計量経済学 |
Research Abstract |
本研究は、若年労働市場における転職行動が賃金プロファイルに及ぼす影響について、計量経済学的に分析を行うことを目的をしている。昨年度は、研究計画に従い、2つの課題に取り組んだ。 第1の課題は、若年労働市場に関する現状認識および震災の影響に関する研究である。転職市場に参入する人々の状況と意識とを明らかとするため、阪神圏に住む若年層(25-45歳)の無業女性を対象としたインターネット・アンケートを実施した。アンケート調査では、1,072人分の個票データを入手し、単純集計を終えたところである。調査内容には、過去の就業履歴、今後の就業希望とその理由、現在抱えている不安等を含めた。また、震災の影響については、昨秋に大洪水が起こったタイにおいて現地調査を行った。 第2の課題は、集計データを用いた賃金プロファイルに関する研究である。賃金センサスの集計データを用いて、賃金プロファイルの傾きが世代によってどう変化するかを分析した。世代効果と賃金プロファイルに関する研究蓄積はあるものの、マクロデータを用いた研究とミクロデータを用いた研究が統合されているとはいえず、両者に隔たりがあることは否めない。本研究では、マクロデータを用いつつも、年月を経てデータから抜け落ちていく転職者の存在を明示的に扱うことで、賃金プロファイルと転職との関係を分析している。分析から、5年後の定着率が低いほど賃金プロファイルの傾きが急になる傾向が確認された。これは、マッチングモデルが示す結果と整合的である。個人レベルでみれば賃金プロファイルの傾きはさほど上がっていないにもかかわらず、生産性が高い人がより長く就業を継続するために、集計データとしての賃金プロファイルの傾きが急になっている可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定していた2つの課題は計画通り進んでいる。アンケート調査については個票の単純集計も終わり、すぐに分析に着手できる状況にある。マクロ集計データの分析に関してもデータ整備はほぼ完了し、今後はモデル構築を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アンケート調査の個票の分析を行って労働供給側の状況を把握するとともに、求職・求人のミスマッチを分析することで労働需給の実態を明らかにする。また、集計データを用いた分析では、モデルを構築し、推計結果を論文にまとめる。さらに、若年労働力不足が問題となっている介護労働市場に関する研究も引き続き行う。女性労働者の多さ、転職回数の多さといった介護労働市場の特徴に着目し、転職行動に関する他業種との違いについて分析を行う。
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