Research Abstract |
研究全体にかかわるデータベース作成を行った。1982-2005年に世界で開発された新薬からデータ入手可能な800件について,医薬品研究開発プロジェクトを特定し,それぞれの医薬品属性,研究開発,特許,論文,研究者,企業,価格等についての医薬品研究開発過程を整理したデータベースを作成した。また,医薬品特許(物質,用途,製法)を特定し,アメリカ合衆国特許(USPTO Patent Data Base)で検索し,特許保有者,発明者,日時,技術内容等について整理する。さらに,特許引用情報,論文引用情報によって研究主体間の技術情報の移転を特定した。 「第1の個別研究」 医薬品研究開発費用のシミュレーション分析を行ない,1990年代以降の研究開発費用の上昇原因を検討した。医薬品の研究開発費用の推定の枠組みはTuft大学(Dimasi等)の研究方法を利用し,医薬品企業の研究開発支出額を,研究段階ごとに区別して推定し,それぞれを適当な資本費用で割り引いて合計した現在価値によって研究開発費用を定義,測定した。 「第2の個別研究」日本で開発された代表的医薬品数件を対象にした事例研究を行った。とりわけコルステロール降下剤を対象にして,上記データベースならびに聞き取り,各種の資料を総合して,それぞれの研究開発のプロジェクト・ヒストリーを明らかにした。とりわけ医薬品研究開発の段階ごとに,主たる研究者,関与した企業,大学,研究機関,関連企業等を特定し,また,特許情報,論文情報,ライセンス契約等を使用して,研究開発における多様な主体の相互依存関係を調べた。この個別研究によって,医薬品研究開発の社会的分業のあり方を記述し,開発の成否を左右する決定要因を検討した。
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