Research Abstract |
都市圏への若年人口の流入と産業集積の結果,産業構造のみならず,家族構成や家族形態に,地域間で顕著な差異が観察されるようになった.私の研究目的は,近年の少子高齢化の進展によって,これらについての従来までの傾向が,今後,どのような方向に,どの程度変化していくのかを分析することにある.そのためには,まず,家計の行動様式や,産業の立地選択を分析することが必要となるが,本年度の研究目的は,このうち,主に前者について分析することにあった. 家族の形態や構成,地域の特性が,個人の(あるいは家族全体の)立地選択にどのような影響を及ぼすのか,また,こうした立地選択により,家族の構成や地域の特性が,どのように変わってくるのかについて,注意深い考察が必要となる.私は,特に,家族の中において,親世代と子世代が同居するのか否かを,どのように決定しているのかについて,分析を行った. 具体的には,世代重複モデルに,住宅や,その他家族間で公共財的な性質を持つ財を明示的に取り入れ,子世代が,親世代と同居して,これらの財を共有するのか,それとも,地域を移動して,より高い賃金・豊富な雇用機会を得るのかを,これら便益の大小によって選択するモデルを構築した.モデルの分析により,特に少子化が進展していく状況下においては,家族の同居・別居形態は,一つのパターンが繰り返されること(代々親子が同居してきた家系では,今後も同居パターンが繰り返される),そして,このことにより,少子化が進展していく経済では,地域間移動がより一層限定的となってくることが示された.分析結果は,論文゛A model of endogenous determination of intergenerational housing pattern and its application"としてまとめ,投稿準備中である.
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