2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの持続可能な経済発展のための地域レベルデータによる環境と貿易の実証分析
Project/Area Number |
22530253
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
本間 聡 九州産業大学, 経済学部, 教授 (70368869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 裕司 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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Keywords | 環境政策 / 貿易 / 東アジア / 環境効率 / 環境経済学 |
Research Abstract |
平成23年度は、昨年度に整備された貿易・環境に関するデータベースに基づいて、貿易が環境に与える影響をついての実証分析に着手した。このデータベースは150カ国以上の国を含むが、これは東アジア経済圏の持続可能性を研究する基礎となるものである。今年度は、吉田裕司氏との共同研究として、先進国から発展途上国に汚染集約的な産業が移転することで貿易が発展途上国の環境悪化を招くというpollution havens仮説を研究した。これまでのpollution havens仮説に関する多く研究は、国全体の汚染排出量を所得や貿易額などで回帰分析するという間接的なアプローチであったが、本研究では貿易によって生じた汚染物質排出量を直接的に推定するアプローチを行った。具体的には、1988-2009年に関して品目別に整備された汚染排出係数と輸出額の積を国ごとに計算することによって、貿易が産業構造にどのような影響を与えるのか(構造効果)を明らかにした。それによって、(1)輸出に関しては、pollution havens仮説が成立していること、(2)輸出先を所得別に分類してコントロールしても依然として輸出に関してpollution havens仮説が成立していること、(3)10種類の汚染物質についてみると、汚染排出量の成長率が輸出額の成長率を上回る国と下回る国はほぼ半々であることがわかった。また、日本や韓国を含むOECD14カ国のエネルギー効率を産業別に包絡分析法(Data Envelopment Analysis)で評価した。分析の結果、韓国はエネルギー消費の削減余地が大きいことがわかった。以上の成果は学会や研究会で発表し、ディスカッションペーパー2本にまとめられた。それらは投稿した国際学術雑誌からは棄却されたが、そこでのレフェリーからのコメントを反映させて、別な雑誌に投稿するために改訂を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東アジア経済圏の持続可能性を分析するための研究の基礎として、世界150カ国以上の輸出入に関する品目別のデータベースが整備された。また、投稿した国際学術雑誌からは棄却されたが、改訂中の論文が2本、新規に執筆中の論文が1本あることから、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として、今年度に国際学術雑誌に棄却された論文を査読者のコメントを生かして改訂して、別な国際学術雑誌に投稿することがあげられる。また、以下のように研究の範囲を拡張することを予定している。東アジアの持続可能な発展というテーマで研究を開始したが、東アジア諸国の貿易相手国は全世界に及びこともあり、データベースの作成においては150カ国以上のデータを用いた。そこで、世界全体に関して持続可能な環境と貿易について研究することが可能となったことから、世界レベルでの分析を行った後に、それをふまえて東アジア経済圏の持続可能性を分析する予定である。
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Research Products
(3 results)