2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530268
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
駿河 輝和 神戸大学, その他の研究科, 教授 (90112002)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中国の直接投資 / 海外出稼ぎ / 契約栽培 / 商業作物 / 子どもの健康状況 |
Research Abstract |
2012年11月にラオス南部サワナケット県のリエンサイ村、ナーハー村など幾つかの村を訪問して教育と健康に関してサーベイを行った。メコン川に隣接した村では、対岸のタイの村において若者がバンコクに出稼ぎに行くために人手不足になり、ラオスからボートに乗って日帰りで農作業に出かけて賃金を得るといったことが行われていた。また、買いものにも対岸のタイに出かけていた。サワナケットの産業特区にも訪問して、現状を聞き取り調査した。 ラオス北部のウドムサイ県の3つの村についてサーベイの結果を利用して、健康状況を調べた。過少体重と過小身長を指標として使ったが、村の豊かさが過少体重と過小身長に大きな影響を与えており、村の発展により健康状況の改善の余地があることを示した。 ラオス北部における中国商人の契約栽培の影響をサーベイしたデータにより分析した。その結果、契約栽培のパイオニア的な村であるナサヴァン村では、タバコ、パッションフルーツ、ピーマンなどの商品作物を導入する家計の数と栽培面積が急速に拡大していた。ナサヴァン村の家計データを利用して分析すると、その他作物の販売が現金収入を押し上げていて、商品作物を作っているかどうかが現金収入の水準に重要な要因になっていることが分かった。言い換えると、商品作物が作れるかどうかにより所得格差が広がっているといえる。また、契約栽培がうまくいかなかった隣の村は、自給自足の状況にとどまり、現金収入がほとんどない状況で、村間の格差を広げていた。しかし、2011年の調査では、貧しかったマイナータオ村でも隣の村の成功を見て、契約栽培を導入し、大幅に現金収入を増やしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラオス南部のサワナケット県リエンサイ村やナーパン村などで子供の健康と教育、タイへの出稼ぎの状況に関してサーベイ調査して十分なサンプルを集めることができた。ラオス北部のウドムサイ県において集めたデータを利用して、村の豊かさと子どもの健康状況に関する論文を発表することができた。また、同じサーベイ調査のデータを利用して、中国商人による契約栽培と商品作物の導入の現金収入と所得格差に与える影響について論文を発表することができた。幾つかの村を調べることにより、村間の格差と村間の商業作物導入の伝播の状況がわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ラオス北部の農山村のサーベイを引き続き行う予定である。もう一年データを追加することにより、中国からの商品作物の導入による現金収入の増加の動向、村間の格差と成功した村からの波及、教育や健康に与える状況をより動態的に研究することができる。これまでのデータではパネルデータを作成するには名前による識別が困難であった。もう一度名前を確認することによりパネルデータの作成が可能となる。マイナータオ村の予想外の現金収入の拡大の要因を精査したい。また、ラオス南部の村における出稼ぎの影響のサーベイをまとめて論文として発表する予定である。
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