2011 Fiscal Year Annual Research Report
景気循環のシンクロナイゼーションと景気指標の評価開発に関する研究
Project/Area Number |
22530272
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 宏 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (90292078)
|
Keywords | 景気先行指数 / 経済協力開発機構 / 周波数領域因果性検定 |
Research Abstract |
『景気循環のシンクロナイゼーションと景気指標の評価開発に関する研究』という研究課題のもと,今後5年間にわたって国民生活にとって重要であり,ゆえに国民の関心も非常に高い景気に関する研究を行っている。この研究期間の2年目にあたる本年度は「景気指標の評価・開発に関する研究」を中心に研究を行った。経済協力開発機構(OECD)は,日本を含むその加盟国と中国やブラジルなどの主要非加盟国の景気先行指数(CLI)を計算・公表している。景気先行指数は,国によって異なるものの8系列程度の構成系列から景気循環成分を抽出・合成して作成される。この構成系列の構成系列としての妥当性は景気先行指数のパフォーマンスに影響を及ぼすため検討の対象となる。今般,近年開発された周波数領域因果性検定法を使用してこの妥当性を検証することを計画した。周波数領域因果性検定は,各角周波数での因果関係を把握することができ,通常の因果性検定法に比べて詳細な情報を得ることを可能にする。この研究を進めるにあたって問題となったのは,この手法を提案している論文の中で指摘されているこの手法の欠点の存在であった。そこで,研究の前段階としてこの欠点について研究を始めた。すると,この欠点は,この手法の提案者たちが使用した特殊なモデルの場合にのみ起きる欠点であり一般に起きるわけではないことがわかった。今年度はこの研究成果を論文にまとめ雑誌に掲載することに取り組んだ。その結果,つい最近,計量経済学分野の査読付き国際学術誌であるEconometric Reviews誌から掲載決定の知らせを受け取った。この成果を踏まえて,来年度は,周波数領域因果性分析を利用してそうした構成系列の評価を行う研究を進める計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周波数領域因果性検定法を使用した構成系列の評価に関して,分析手法を使用するにあたっての問題点を今年度克服する研究成果を得たこと,そしてその研究成果を査読付き国際学術誌に掲載することができたことによる。加えて,景気先行指数計算上必要となるホドリック・プレスコット・フィルターの使用に関する論文がOECDの査読付き学術誌に掲載決定となっている。こうしたことにより(2)とした。(1)にしなかったのは,実際に周波数領域因果性検定手法を用いての研究の成果を現在までのところ得ることができていないことによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画は,おおむね順調である。来年度は,今年度の研究成果を踏まえて,周波数領域因果性検定法を使用した景気先行指数構成系列の評価に関する研究を推し進める計画である。そのほか,最近開発され注目されつつある11トレンドフィルターなどのトレンド抽出フィルターを使用した分析についての仕事も行いたい。
|
Research Products
(1 results)