2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドの産業発展と地場企業:研究開発における企業関係を通じた企業の能力形成
Project/Area Number |
22530296
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
島根 良枝 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (70450525)
|
Keywords | インド / 産業発展 / 地場企業 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実績の概要は、次の3点。 1.企業調査の準備と実施に注力 平成23年度には、当初の計画通り、企業調査の準備と実施に注力した。本研究の目的である、「地場企業を頂点とする国内価値連鎖体系の中で、最終財生産者、中間財生産者、より下次の中間財生産者の能力形成が促されている」というインド産業発展の重要な特質の実態と企業・産業発展への影響を検証するためには、最終財生産者、中間財生産者、より下次の中間財生産者それぞれに対して企業調査を実施することが不可欠であり、計量的な分析を行うために調査企業の数を十分に確保する必要があるためである。 企業調査の準備と実施は現地の研究協力者と共同で行い、その具体的な内容は、(1)調査依頼状、質問状の作成、(2)業界団体、企業への調査協力依頼、(3)アポイントのアレンジ、(4)実際の企業訪問調査、(5)調査結果の精査、(6)調査結果における不整合の事後的な確認。 なるべく多くの企業調査を実施できるよう試みたが、調達先である中間財生産者を紹介してもらうことが以前に比べて非常に難しくなり、また紹介を受けても質問に対して回答を得にくいという問題に直面した。世界的金融危機の影響などビジネス環境が厳しくなる中、優良な中間財生産者を確保する競争が厳しさを増している影響を実感させられた。 2.研究者との意見交換を実施 当初計画したインドでの学会報告は、予定していたInstitute for Studies in Industrial Development主催のインド企業・産業研究の年次大会が開催されなかったため、実施できなかったが、本研究の問題意識に近い研究者とコンタクトをとり、メールを通じた原稿や意見の交換を行うとともに、企業調査についても紹介を受けることができた。 3.取得したデータの分析を開始 現地調査時にインド統計局の年次工業統計の個票を入手した。この個票データは、読み込みや処理の仕方に難しい点もあるが、当該統計に関する統計局の担当者と十分に意見交換を行うことができたため、分析を開始することができた。引き続き、担当者とコンタクトを取りながら分析を進める予定。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、企業訪問調査の実施が難しくなった。そのため、企業調査の実施は当初の計画に比べてやや遅れている。一方、工業統計の個票が入手でき、その分析については予定以上の成果が得られつつある。両者を勘案すると、全体としては概ね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
企業側の調査受入姿勢が急速に変化している中で、企業調査の実施をいかに進めるかが本研究を遂行する上での重要な課題になっている。今後の研究の方針としては、現地の研究協力者との連携、および出張調査の機会を最大限に活用して企業調査の実施に注力することを最優先する。ただし同時に、公式統計ではありながら研究上の利用が進んでいない工業統計年報個票データの分析を進め、企業調査の実施可能性の見通しによっては、研究のリソース(資金と時間)の配分において、企業調査と個票データ分析のバランスを再検討するという対応をとる。
|