Research Abstract |
平成22年度は,規模の小さい都市ガス事業者が多数存在するわが国の都市ガス事業の効率化を考える上で重要な費用構造の分析を行った。具体的には,わが国の中小都市ガス事業の費用構造を費用関数でモデル化し,2005年度の中小都市ガス事業者(総費用1,000億円未満)195社を対象に,費用関数の形状に先験的な仮定を置かないノンパラメトリック回帰の手法(加法モデル)を用いた計量分析を行った。費用関数のモデルは,需要種別(業務用・工業用と家庭用)のガス販売量を産出量とする場合(モデル1)と,需要家数とガス販売量を産出量とする場合(モデル2)の2つの複数財費用関数とした(データの制約により投入要素価格は含めない)。さらに,ネットワークの広さを表わす導管延長を費用に影響を与える外生的要因として含める場合も検討した。分析の結果,モデル1の場合,業務用・工業用のガス販売量に関しては,導管延長の有無に関わらずほぼ線形であるが,家庭用のガス販売量については,ネットワークの大きさの違いを考慮してもしなくても非線形性が認められ,一定の規模までは逓減的増加関数,その後,直線的な増加関数になっていることが分かった。次に,モデル2の場合,ネットワークの大きさを考慮しなければ,ガス販売量に関しては強い非線形性が認められるものの,需要家数に関してはほぼ線形であったものの,導管延長の違いを考慮すると,ガス販売量および需要家数が費用に与える影響は,ほぼ線形関数として表されることが分かった。このように,パラメトリックな費用関数の推定では把握できない費用関数の詳細な形状を明らかにしたことで,少なくともネットワークの大きさを考慮せずに,ガス販売量と費用の関係を分析する場合には,小規模と中規模の事業者の間で費用構造が異なることを考慮する方が望ましく,推定された費用構造に基づく政策的含意も異なりうることを示すことができた。
|