2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530306
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三城 安生 名古屋大学, 経済学研究科, 学術研究員 (10547441)
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Keywords | 租税競争 / 空間競争 / 海外直接投資 / 市場構造 / 市場統合 |
Research Abstract |
本年度は、直接投資を行う海外企業の立地選択と各国の間で行われる租税競争との関係を明らかにする研究を行った。研究の成果として、海外企業が投資を行う際に直面する様々なリスク要因をモデル化した研究が国際的な学術専門誌に掲載された。また、市場統合が企業の立地選択にどのような影響を及ぼすかについて分析を行ったが、ここで得られた研究成果も海外の学術専門誌に掲載された。 一方、海外企業が国際的な合弁企業を構築する際の立地選択と誘致国間の租税競争との関係を分析した研究も行った。この研究では、理論モデルに市場サイズの非対称性を導入した分析を行い、先行研究とは異なる結論を導き出すことができた。また、海外直接投資を誘致する国の中に既存企業が存在するかどうかは、海外企業にとって立地選択の重要な要因となり得ることが先行研究で示されているが、本年度の研究では、既存企業が海外資本によって部分的に所有されるケースについて分析を行い、先行研究の仮定をより現実的な状況に拡張することによって新しい分析結果を得ることができた。 さらに、市場構造の違いをモデル化した研究も行った。先行研究では、国内市場に民間企業である既存企業が存在するかどうかに焦点を当てた研究が行われてきたが、移行経済にある国々や発展途上国、あるいは先進国において国有企業(公企業)の果たす役割は依然として大きいことが認識されており、その存在をモデル化した理論研究は重要であると考えられている。そこで、本年度の研究の中では、公企業の存在によって海外企業の立地選択がどのような影響を受けることになるのかを明らかにする研究にも取り組み、一定の研究成果を得ることができた。 これらの研究成果は、理論モデルの精緻化を図ると共に論文にまとめ、学術専門誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外企業による直接投資に関する立地選択と各国政府によって展開される租税競争との関係を分析した研究において、カントリーリスクの概念を導入した研究を行った。そこで得られた研究の成果が国際的な学術専門誌International Review of Economics & Financeに掲載された。また、国際的な合弁企業の構築と租税競争との関係を分析した研究において、市場サイズの非対称性を導入した分析を行うと共に、市場構造の違いがもたらす影響についての分析も行うことができた。これらの研究成果は、関連したその他の研究成果と共に国際的な学術専門誌に投稿中である。このような研究の進捗状況から、研究の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな研究成果を生み出すために、研究実施計画に基づいた研究「政府間協調及び政策的な規制に関する研究」と「海外直接投資及び企業行動に関する研究」のふたつを前年度に引き続いて行う。特に、市場構造と市場間の距離の2点に着目した研究を行い、空間的要素が租税競争に与える影響を明らかにする。こうした研究活動に加え、国際的な学術専門誌に投稿中である複数の論文に加筆修正を行い、論文の学術的な貢献度を高めて研究成果の公表に努める計画である。また、執筆途中にある複数の論文を完成させ、国際的な学術専門誌に投稿する準備を進める予定である。
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