2011 Fiscal Year Annual Research Report
リレーションシップバンキングにおける貸出金利戦略の研究
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22530307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 克俊 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80292746)
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Keywords | 信用リスク / 情報の非対称性 / オークション / 構造推定 / 銀行 |
Research Abstract |
本研究では、銀行による貸出金利の設定の戦略的側面を実証的に分析する。借入企業の信用リスクに直面する銀行は、ライバル銀行との間でどのような戦略で貸出金利を提示すればよいかという問題に直面している。高い金利を提示すれば優良な顧客を失うかもしれず、逆に低い金利を提示してしまうと、大きな損失を被ることになる。情報が完全で、銀行のコスト構造に違いがなければ、この問題はそれほど深刻ではないが、一部の銀行が優位な情報を持つ場合には、この問題は深刻になる。つまり、銀行は借り手の信用リスクを知らないだけでなく、他の銀行がその企業の信用リスクを知っているかどうかが問題になる。このような状況における貸出金利の設定がどのようになっているかを分析している既存文献はまだないので、本研究ではSharpe (1990)やvon Thadden (2004)のモデルを利用して、最適ビッド関数に基づいて、観察される均衡ビッド(金利)の分布や尤度関数に現れるパラメタの推定を試みる。 推定するのは、観察されないシグナルの正確度(具体的には、借り手の信用リスクが低いときの、銀行が低いシグナルを受け取る条件付き確率)である。用いるデータは、中小企業の借入金利や共通の信用リスクのデータである。推計方法は、オークションなどで利用される標準的な構造推定の方法である。理論モデルに基づく、尤度関数を定義し、最尤法によりパラメタを推定する。本研究が可能となっているのは、観察される信用リスクを共有知識としての事前確率とみなすことで、借入金利が低いか高いかについての基準とすることができるからである。現状では、信用リスクの低い企業で0.53、高い企業で0.86のパラメタが推定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最尤法の収束状況にやや問題があるが、プログラムの作成には時間がかからなかったので、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
統計ソフトStataによる推計を行っていたが、最尤法の推定に優位性のあるMatlabへのソフトの変更を検討している。これは、収束などの問題点を改良するためである。
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Research Products
(2 results)