2011 Fiscal Year Annual Research Report
事例ベース意思決定理論による非完備市場での資産価格評価
Project/Area Number |
22530310
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
岩城 秀樹 京都産業大学, 経営学部, 教授 (40257647)
|
Keywords | ファイナンス / 不確実性 / 意思決定理論 / 事例ベース意思決定 / 主観確率 / 非期待効用理論 / 行動経済学 / 資産価値評価 |
Research Abstract |
本研究は事例ベース意思決定理論をファイナンス分野での資産価値評価へ応用することによって、新たな知見を得た上で、実務への応用可能な評価式を導出することを目的としている。本年度は、実務応用上の観点から、企業財務データを収集し、そのデータを元に、事例ベース意思決定理論に基づいて企業倒産確率の推定を行うことを試みた。リーマンショック以降の企業業績の悪化から、東証1部上場企業においても、倒産する企業が出現していることを鑑みるに、適切な企業倒産確率の推定と、それに基づいた、企業資産価値評価は、社会的に非常に要請が高く、本研究の遂行と進展は非常に有意義であるといえる。 本年度、本研究で行った実証分析では、倒産確率の推定を,既存のロジットモデルと事例ベース意思決定理論に基づくオリジナルモデルとで行い,どちらの結果が倒産確率の推定においてより説明力が高いのかを比較した。本年度、本研究での実証分析の結果は,倒産確率の推定においては、本研究での事例ベース意思決定理論に基づく倒産確率推定モデルは、ロジットモデルとほぼ同様の推定あるいは下回る推定を行い,総合的に見ると事例ベース意思決定理論に基づくモデルの説明力はロジットモデルよりやや低いという結果になった。しかし,本年度行った実証分析では、使用する財務指標をロジットモデルよる推定が優位になるように選択していたので、このことを考えると,事例ベース意思決定理論に基づく倒産確率推定モデルの使用に一定の意義があるとも考えられる。したがって,今後、事例ベース意思決定理論に適した変数選択の方法を考察することで,事例ベース意思検定理論に基づくモデルによる倒産確率推定のパフォーマンスを向上できる可能性があると考えられる。次年度は、この考察を行い、さらには、最近の行動経済学の発展を取り入れて不確実性評価における主観的生起確率の新たな導出方法を追及する予定でいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、事例ベース意思決定理論に基づく倒産確率推定モデルの導出を行うとともに、そのモデルに基づいて、実際の企業財務データを用いて企業倒産確率の推定を行うことによって、実証的に導出したモデルの妥当性の検証を行った。この成果について、途中結果を学会発表したが、実証結果が満足のいくものではないため、未だ論文としてまとめた上で、国際専門学術誌に投稿するまでには、至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度行った実証研究の結果が芳しくなかったことを鑑みて、今後は、事例ベース意思決定理論に適した変数選択方法の考察を続けて、実証における結果の改善を図る。しかしながら、より良い結果が得られない場合に備えて、最近の行動経済学の成果を取り入れながら、理論面において、事例ベース意思決定理論とは異なった主観的意思決定方法を積極的に導入して行くことによって、成果を確実に上げられるように努めていきたい。現在、事例ベース意思決定理論Khbanoff et al. (2005)が提案した滑らかな曖昧性回避(smooth ambiguity aversion)を使った分析を計画しており、曖昧性回避がポートフォリオに与える影響について分析を行うことによって、いくつかの結果を得ている段階にある。
|
Research Products
(2 results)