2010 Fiscal Year Annual Research Report
先端デリバティブ取引の機能と規制に関する総合的研究
Project/Area Number |
22530311
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
仁科 一彦 明治学院大学, 経済学部, 教授 (30094311)
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Keywords | デリバティブ / 経済厚生 / ボラティリティ / implied volatility |
Research Abstract |
金融・資本市場で取引されている既存の各種請求権を原資産として設計されたデリバティブは、最引費用の削減と・経済厚生の増大という重要な機能を持つ。前者は詳細な分析を待たずとも容易に理解できるが、後者について明確な指摘をするためには、精緻な理論的分析を必要とする。本研究はその解明を最終的な目標とするものである。本年の研究では、デリバティブ(具体的な例として採用したのは株価指数オプション)市場から観察されるボラティリティについて検討した。 均衡理論を前提とせずに、過去のデータからボラティリティを推計し、それが市揚で成立しているimplied volatilityといかなる関係にあるかを詳細に調べた。具体的には、大阪大学金融・保険教育研究センターで開発した、いわゆるモデルフリーのボラティリティ指数(VXJ)の特性を分析して、世界で利用されている既存の同種指数に比較して、すくなくとも事後的には統計的な優位性を持つことを確認した。 ここで対象としたボラティリティ指数は、デリバティブの市場価格に反映されている、原資産価格の将来の変動に関する市揚参加者の予想を表す値である。参加者の予想を直接測ることは不可能であるから、市場で成立した原資産価格を前提にして、何らかの仮定をおいて推計することになる.従来採用されてきた代表的なアプローチはBlack-Sholes均衡式を前提にした推計であるが、本指数はそれを必要としない推計方法であり、将来の中心的な手法になると思われる.実際、欧米における先進的な研究では、この手法が大勢を占めており、その中で工夫を凝らした推計が発表されている。 今回得られた結果は、事後的なテストをみても非常に優れた性質を示しており、欧米の代表的な経済誌にも取り上げられている,おそらく金融指数に限らず経済やビジネスの指数について、わが国独自の開発結果がこれほど注目された例は少ないのではなかろうか.これからは同指数をさらに精緻化するとともに、その応用についても先駆的な研究を試みる計画である。
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