2011 Fiscal Year Annual Research Report
先端デリバティブ取引の機能と規制に関する総合的研究
Project/Area Number |
22530311
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
仁科 一彦 明治学院大学, 経済学部, 教授 (30094311)
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Keywords | デリバティブ / ボラティリティー / 経済厚生 / モデルフリー / Implied volatility |
Research Abstract |
金融・資本市場で取引されるデリバティブは、取引費用の削減と、経済厚生の増大という重要な機能を持つ。これらの機能について、厳密な理論的分析と精緻な実証分析を試みるのが本研究のテーマである。 研究2年目にあたる本年の研究では、実際に取引されているデリバティブの代表として日経225株価指数オプションを採用し、観察されるボラティリティについて検討した。ボラティリティ推計には、均衡理論を前提としない、いわゆるモデルフリーの推計式を用いて、大阪証券取引所において実際に取引された精密なデータを対象にした。この推計値はデリバティブ理論で重要な意味を持つimplied volatilityに対応するものであり、最近では、金融・資本市場の参加者のみならず、金融政策をはじめとするマクロ経済政策の視点からも注目されている。今回の推計結果は、国内にとどまらず世界的な関心を集めて、英紙The Economistに掲載された。 Implied volatilityはデリバティブ取引を通して市場に現出した情報であり、最も重要な情報であると考えられている。この情報が種々の経済活動に対していかなる影響をあたえ、最終的には経済生活にいかなる意味を持つかについて検討する必要があるが、2011年9月に韓国で開催された国際学会において発表した論文では、これについて広範な影響を持つ可能性を論じた。そこでは、影響が金融・資本市場にとどまらず国民経済全体に関わる可能性を指摘したことが多くの関心を集めた。 Implied volatilityの推計に成功したことにより、本研究の中心テーマであるデリバティブの経済的機能の理論分析
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デリバティブの経済機能に関して非常に重要なボラティリティーについての、理論的および実証的研究が予定通りに進展したこと(The Ecollomist誌に掲載されたこと)。理論的分析では、spanning conditionについて考察を深めることが出来たこと。以上から判断して、順調に進展していると評価する
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の作業は、第一に昨年度に成功したモデルフリーのボラティリティ推計をより精緻な内容に改良することである。具体的には推計方法をより精緻化して、統計学的な検討に耐える内容にする。そのうえで、デリバティブ市場がもたらす高頻度のデータにも対応可能な形式に発展させること。第二は、デリバティブ取引の経済厚生上の機能とその特性について、詳細かつ広範な理論的整理を完成することである。最近の経済状況では、さまざまな局面においてデリバティブが広範な関心を集めていることは周知の通りであるが、多くの誤解や曲解が散見される。これらの弊害をさけるためにも、デリバティブに関する厳密で明快な説明が必要であるから、厳密な理論分析に基づいた正確な説明を整理しておく計画である。
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