2010 Fiscal Year Annual Research Report
人的資本蓄積と移行経路を考慮に入れた動学的歳入推計分析
Project/Area Number |
22530314
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西岡 英毅 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (20218118)
|
Keywords | 財政学 / Dynamic Scoring / 人的資本蓄積 / 移行経路 / 大域的シミュレーション法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、税制の変更による税収の変化を動学的観点から推計することにある。本研究の意義は、この分野の先行研究が分析していない人的資本蓄積を組み込んだモデルにおいて、西岡(2011)の大域的シミュレーション法を用いて、新定常均衡に向かう移行経路を含めて動学的歳入推計を行う点にある。税収の流列を評価するためには、単に税収の時間経路を分析するだけでは十分ではなく、長期間にわたるトータルの税収の大きさを評価する必要がある。評価として第一に思いつくのは、税収の現在価値の大きさを比較することであるが、本研究においては、伝統的な外生的成長モデルの場合には税収の現在価値を比較することに意味はあるが、内生的成長モデルの場合には税収の現在価値を比較することは重要ではないことを示した。外生的成長モデルにおいては、経済の一人当たり変数の長期成長率は外生的な技術進歩率によって与えられ、租税政策は長期成長率に影響を与えることができないから、税収の現在価値を増加させることによって、より多くめ効率単位当たりの政府支出をファイナンスすることが可能になる。一方、内生的成長モデルにおいては、租税政策は長期成長率に影響を与えることができる。したがって、たとえ税率の上昇によって税収の現在価値が増加したとしても(たとえ成長率効果が小さくなっても、それを相殺するほど利子率が低くなる結果、税収の現在価値が増加する可能性がある)、長期成長率が低くなりすぎて、元(税率変化前)の政府支出の流列をファイナンスすることができない可能性が生じる。このような理由から本研究においては、ファイナンス可能な政府支出の流列という観点から、税収の流列を分析した。税制改革によって税収が長期的にどのように変化するかに関する数値情報は、今後の財政再建を意識した税制改革の議論にとっても、重要であると考える。
|
Research Products
(1 results)