2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530320
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
八巻 節夫 東洋大学, 経済学部, 教授 (90095737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 晃弘 東洋大学, 経済学部, 准教授 (10453854)
中澤 克佳 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20453855)
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Keywords | 適性負担の原則 / 介護移住 / 社会扶助 / 補完性原理 / 牽連性の原則 / 出生率の決定因 / 地方財政運営の持続可能性 / 等価原則 |
Research Abstract |
平成23年度の研究の主たる目的は、第一に、世代間の役割分担に関して、現役世代と将来世代間の福祉サービスの給付と負担のバランスに関して適正負担原則の観点から問題をえぐりだし、その抜本改革を考察する。第二に、国と地方の間の福祉の役割分担の明確化のために、とりわけ国から地方への義務付けと財源調達問題に分析のメスを入れる。この点に関して、一つの教訓になるのが、ドイツの「牽漣性の原則」の有効性についてつぶさに探求し、日本への導入の可能性を探る。第三は、官と民の役割分担を適正負担の原則からアプローチする。負担を適正化することを通して、官と民の守備範囲を明確にすることができる。このうち、第一と第二の目的はほぼ達成できた。その研究成果は主として、八巻の「適正負担の適用と課題-ドイツの社会扶助を中心として-」にまとめられている。また、第三についてほ、主として介護サービスを中心として、営利、非営利事業の地域参入行動の実証分析を行った中澤の「地方財政改革と公共サービス水準の変化」ミニ・ワークショップ「地域間競争・協調と分権システム」(同志社大学)としてまとめられている。以上の実績は、福祉領域の個別分野を対象としているが、そこに共通する改革要因を浮き彫りにしている。すなわち、社会扶助や介護保険給付の執行機関は自治体が現実適合的でありふさわしい。その意味では地方分権の強化が求められる。しかし、他方で財源調達を分権的に行った場合、財源の地域間格差を拡大する結果をもたらす。したがって、財源調達の責任をあくまで政策の意思決定を行う中央政府に求め、中央政府が地域格差を考慮しながら弾力的に配分していくのが適正負担の原則にかなうやり方である。要は「補完性原理」の観点から意思決定レベル、執行レベル、財源調達レベルを「適正負担の原則」に矛盾することなく定めていく改革が求められるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」にも記したように、研究計画段階の研究目的の主要部分は達成できた。残された課題は、社会扶助、医療、介護の分野での現実予算の中に踏み込んで、給付と負担の適合の観点から改革案を提示することである。
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Strategy for Future Research Activity |
社会扶助、医療、介護の現実予算における「受益と負担」の不適合状況を明らかにし、問題解決のための具体的改革案を提示する。
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