2011 Fiscal Year Annual Research Report
リスクプレミアム分解による投資行動と株価変動の因果関係に関する研究
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22530324
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
乾 孝治 明治大学, 大学院・グローバルビジネス研究科, 教授 (60359825)
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Keywords | 金融論 / 金融工学 / 行動ファイナンス / マイクロストラクチャー |
Research Abstract |
1.ティックデータによる流動性尺度の計算と日経平均先物・現物の関係性分析 株式市場で支配的な投資行動と株価に反映されているリスクプレミアムとの因果関係の説明を試みるために,前年度に整備したティックデータ・データベースを活用して分析を進めた.まず,リスクプレ・ミアムの源泉として注目している流動性リスクについて,Kyle(1985)により示された3つの側面に対応する尺度を提案・計算し,銘柄・日付毎に2009年1月から2011年3月まで蓄積した.現在はこれら尺度の特徴を分析している最中で,結果はH24年度に学会で報告する予定である.また,同データベースを活用して日経平均先物と現物の価格変動に関する因果関係について分析を進め,先物→現物の方向性での因果関係が強いことを確認しており,この結果は最適執行戦略などへ応用できる可能性が高い.この成果も学会発表に向けて準備中である. 2.流動性リスクプレミアムに注目した株価とクレジット市場の関係に関する分析 株価のリスクプレミアム分解を検討する中で,企業の信用リスクや,社債・CDS市場の非流動性が株式市場へ及ぼす影響(因果関係)に関する問題意識が生まれ,CDSおよび社債スプレッドのリスクプレミアム分解と株式市場の関係性を調べた.わが国のCDSおよび社債市場の詳細な取引データは公開されていないため,欧米のような詳細な分析はできないが,簡便的な方法によりクレジット市場の非流動性リスクが株価に影響を与える可能性を示唆した。この結果は"Market consistent valuation of insurance liabilities with special emphasis on illiquidity risk premium and insurance ALM in Japanese context"の一連の報告の一部として複数の学会等で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,初年度でデータベースの原型は完成し,今年度は基本的な統計量の計算を終え,テーマに沿った分析を進めてきた.学会発表は同」テーマであるものの3回行っている.最終年度には複数の成果発表ができる見通しであり,上記の区分と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初は株式市場に注目したリスクプレミアムの分析を想定していたが,主なリスク要因として注目される流動性リスクが,必ずしも株式市場の内生的要因で決まらないことが分かってきた.特にCDSや社債市場の非流動性リスクの影響が,先行研究サーベイおよび実証分析で示唆され,本研究においても,クレジット市場の分析も同時に行う必要性が高まっている。ただし,わが国のCDSや社債の市場データは一般に公開されていないため,直接観演できないビッドアスクスプレッドなどの流動性リスク尺度を価格データから推定できるか検討する必要がある.H24年は本研究最終年度であるため,どこまで具体的な成果が得られるか不透明であるが,CDSや社債に関連する分析も本研究に含め,株式市場に限定しない方向で研究計画の見直しを図りたい.
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Research Products
(3 results)