2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530336
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 純子 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (90261271)
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Keywords | 産業調整 / 貿易調整援助 / 貿易摩擦 / 通商摩擦 |
Research Abstract |
本研究は、日本の産業調整について経済史的視点から分析することを課題としている。対象とする時期は1970年代を中心とし、事例として繊維産業(綿工業)のほか、それとの比較で石炭・造船・鉄鋼・化学などの諸産業もとりあげている。 本年度は、日本の産業調整に大きな影響を与えた日米貿易摩擦、及び、アメリカの産業・貿易政策、貿易調整援助政策についての調査・研究を重点的に行った。第二次大戦後、アメリカが中心となって構築した自由貿易体制は、先進国の経済成長と発展途上国の経済発展を促進し、国際貿易の拡大に寄与した。しかしその一方で、アメリカは国内的には様々な対応を迫られることになる。たとえば、自由貿易政策の推進によって安価な輸入品が流入し「損害」を蒙る業界(国際競争力を失った衰退産業)が抵抗勢力となったため、アメリカ政府は、自由貿易の影響を緩和し、当該産業への補償、産業の競争力強化、他産業への転換等を内容とする産業調整援助政策(貿易調整援助)を実施せざるを得なくなった。また、日本が急速にアメリカにキャッチアップし、繊維・鉄鋼・ハイテク産業などの分野でアメリカと競合するようになったため、アメリカはとくに日本に対する産業・貿易政策を戦略的に転換し、それは日米貿易摩擦という現象として現れた。 以上に関するアメリカ側及び日本側の資料をハーヴァード大学・コロンビア大学などで収集し、分析・検討した。その結果、日米双方の政策決定過程、政策の具体的内容、政策効果について、従来の研究では必ずしも明らかにされていない点、あるいは適切な分析・評価がなされていない点について解明しつつある。その成果を2本の論文に分けて執筆中であり(第二次大戦後のアメリカの貿易政策に関する論文:貿易調整援助に関する論文)、平成24年度に国際学会において口頭発表の後、論文として刊行する予定である。 このほか、日米貿易摩擦や日本の産業調整についての内容を含む論稿「『高度成長期』研究レビュー-経済史・経営史の視点から-」を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、政策側に関する研究は当初の計画以上に進展したが、企業側に関する研究が若干遅れた。本年度後半はハーヴァード大学に客員研究員として滞在し、日米貿易摩擦やそれと関連するアメリカの産業・貿易政策(産業調整援助政策を含む)、さらにアメリカで所蔵されている日本政府・通産省の動向に関する資料の収集が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に大量に収集した資料の分析を進め、学会報告、論文の執筆・刊行を行う。また、同年度中に収集しきれなかった資料(アメリカ国立公文書館、アメリカ各地の分館を含む)の収集も併せて行う。 このほか、産業調整と関連して、産業発展の動態をマクロ的に考察する論稿を執筆する。
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