2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530336
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 純子 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90261271)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 産業調整 / 経済史 / 貿易調整支援 / 繊維 / 衰退産業 |
Research Abstract |
本研究は、日本の産業調整について経済史的視点から分析することを課題としている。対象とする時期は1970年代を中心とし、事例として繊維産業のほか、それとの比較で石炭・造船・鉄鋼・化学などの諸産業もとりあげている。 本年度は、日本の産業調整に大きな影響を与えた日米貿易摩擦、及び、アメリカの産業・貿易政策、貿易調整援助政策についての調査・研究をふまえ、論文の執筆・刊行を行った。第二次大戦後、アメリカが中心となって構築した自由貿易体制は、先進国の経済成長と発展途上国の経済発展を促進し、国際貿易の拡大に寄与した。しかしその一方で、アメリカは国内的には様々な対応を迫られることになる。たとえば、自由貿易政策の推進によって安価な輸入品が流入し「損害」を蒙る業界(国際競争力を失った衰退産業)が抵抗勢力となったため、アメリカ政府は、自由貿易の影響を緩和し、当該産業への補償、産業の競争力強化、他産業への転換等を内容とする産業調整援助政策(貿易調整援助)を実施せざるを得なくなった。また、日本が急速にアメリカにキャッチアップし、繊維・鉄鋼・ハイテク産業などの分野でアメリカと競合するようになったため、アメリカはとくに日本に対する産業・貿易政策を戦略的に転換し、それは日米貿易摩擦という現象として現れた。 以上に関するアメリカ側及び日本側の資料を用いて、アメリカ政府の政策決定過程、政策の具体的内容、政策効果について、従来の研究では必ずしも明らかにされていなかった点について分析を加え、論文としてまとめた。 このほか、日本の繊維産業の生成・発展・衰退過程と産業調整援助政策を韓国のケースとの比較を念頭において分析した論文を執筆し、ソウル大学で開催されたAsia-Pacific Economic and Business History Conference 2013のパネルセッションで口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平成23年度までに収集したアメリカの国立公文書館、大統領図書館、大学図書館の資料収集を用いて論文を執筆したが、収集済で未利用のもの、未収集のものはまだある。 よりいっそう資料の発掘に努めることにより、アメリカの産業調整援助政策とその日本への影響について、さらに分析が深められると考える。 ・繊維産業の事例研究については、これまでかなり蓄積し、論文執筆・口頭発表も行ってきている。ヒアリング調査も行った。石炭産業の事例についても着手し始め、一部は学会報告した。その他の産業についても、今後できるだけ拡張したい。 ・政策分析、産業分析はかなり進んだが、企業分析のほうはデータ入力などにまだ時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
・アメリカの貿易調整支援政策に関する研究をさらに深める。アメリカの国立公文書館、大統領図書館、議会図書館での資料収集を追加的に行う。ヨーロッパ諸国の産業調整援助政策、衰退産業論に関するサーベイを行う。LSEなどでの資料調査を予定している。 ・とくに日本の石炭産業の事例研究を行う。資料はすでに一部収集済である。 ・国内外の学会での口頭発表を積極的に行う。 社会経済史学会(日本:6月)、Association of Business History Conference(イギリス:6月)での報告がすでに決まっており、このほかアメリカのBusiness History Conferenceなどにも応募の予定である。 ・論文を刊行し、研究課題の成果を総括的にまとめる。
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