2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近現代史における地域経済=地方自治の相関と国際比較-戦後期を展望して-
Project/Area Number |
22530340
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 房雄 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (90104869)
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Keywords | ドイツ / ワイマル期 / 世襲財産 / ゲマインデ / 地域経済 / 地方自治 / 農村社会 / 東プロイセン |
Research Abstract |
「ドイツ近現代史における地域経済=地方自治の相関と国際比較―戦後期を展望して」に関する第二年度の研究経過と成果は、およそ以下のとおりである。(1)図書館調査を踏まえた文献・資料の整備については、「ワイマル期におけるドイツ地方自治の歴史的個性と大土地所有――森林問題との関連」に注目して、計画どおり、ライプツィヒ大学歴史学研究所の支援を得つつ、「ドイツ図書館」(Deutsche Nationalbibliothek)ならびに「ベルリン図書館」(Staatsbibliothek zu Berlin)を中心に行った。K.Haselの古典的業績だけではなく、J-B.Holt,F.Raab, F.K.von Zitzewitz-Kottowらの研究書を幅広く検索しながら、それらの熟読に努めた。「ゲマインデの魅力」に富むブランデンブルク型農村社会と、自治意識の覚醒・陶冶なぞ望むべくもないとさえ言われる東プロイセン型農村社会との19世紀末期の基本的相異を照らし出す「ドイツの地域間比較」という新たな視座の必要性とともに、ドイツの「森林問題」の環境史的視角から見た重要性を認識した。この二つの視点は、ワイマル期ドイツの世襲財産(Fideikommiss)問題の在りかを知る上でも必要不可欠なものである。 (2)研究成果としては、ワイマル期における大土地所有の苦闘の様相を、東プロイセンの「ドーナ家」の史実に即して描いた論考を『歴史と経済』に投稿し、同誌の第216号(2012年7月)の掲載が決定した。さらに、フィデイコミスをめぐるR.Schiller, S.Malinowski, R.Gehrke, M.Wienfortらによる近年の研究の着実な進展に接して、当該の問題に関する加藤の研究の国際的成果の一端を確認した。ドイツ語論文'Vom Fideikommiss zum Familiengut'は、2012年7月刊行の研究書(Internationale Studien zur Geschichte von Wirtschaft und Gesellschaft)への掲載が決定しているが、これも、国際的成果を公表するための継続的作業の一環である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載したとおり、本研究は、(a)文書館所在都市でのレビュー・討論(b)図書館調査、文献の検索と収集(c)文書館調査と未公刊一次資料の解読(d)データのパソコンへの入力(e)研究成果の発表(f)研究会の積み重ね、を六本の柱として構想されている。そのうち、(a)(d)(f)は毎年行わなければならない当然の基礎作業であるが、他項目については、三年間、(b)と(c)を中心に研究を進め、最終年に全成果を複数の論考にまとめて発表することを予定した。しかし、(b)と(c)については二年間、主として「プロイセン枢密文書館」(平成22年度)ならびに「ドイツ図書館」(平成23年度)において集中的に作業した結果、当初の計画を大きく上回る成果を収めることができた。とりわけ、文書館での一次資料の収集には積極的に取り組み、申請書で予示した東プロイセン地域史関係のみならず、「世襲財産」の強制廃止をめぐるドイツの「森林問題」にまで踏み込んだ関連史料を発掘できたことは、大きな前進である。したがって、平成24年度以降は、(e)を中心的な課題に設定して、研究の総括を行う。以下に示す二つの論考に加えて、森林問題を追究する別稿を用意している。
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Strategy for Future Research Activity |
文書館・図書館において必ずしも読了しえなかった諸史料・文献の扱いが、実証研究を系統的に進める上での問題点の一つになると思われるが、本研究では、文献のコピーのみならず、文書類のCD-ROMを入手して、解読を続けることができた。したがって、研究遂行上の問題点を感じることはなく、研究計画の変更もない。本研究課題の今後の推進方策についてであるが、ドイツ大土地所有の金融面での苦闘を跡づける「アメリカ債」関連の基礎史料の在りか(Bundesarchiv Berlin)を突き止めたので、その点の文書館調査ののち、研究の総括と展望を試みるため、研究全般にわたる作業のスピード・アップを図る予定である。
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