2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本の鉄道事業における「公共的性格」の再検討
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22530348
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
渡邉 恵一 駒澤大学, 経済学部, 教授 (00267387)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄道史 / 交通史 / 鉄道事業 / 鉄道資料 / 公共的性格 |
Research Abstract |
平成24年度は、上記の課題に対して、主に2つの方向から接近をはかった。第1は、都市部における鉄道事業の分析である。戦間期の東京近郊における電鉄事業の勃興とその後における統合・再編過程について、地域最大の事業者に成長する東京急行電鉄を事例にとりあげ、とりわけ従来、「乗っ取り屋」という一面的評価が下されてきた経営者・五島慶太の事業構想に注目しつつ、その論理と帰結を明らかにした。史料としては、旧運輸省・旧建設省から移管され、現在は国立公文書館が所蔵している「鉄道省文書」に収められている膨大な量の関連簿冊を前身会社・被合併会社・投資会社の分を含めて悉皆調査し、収集・分析作業を重ねた。 第2は、当該期における地方鉄道事業の分析である。史料としては、鉄道博物館(さいたま市)が所蔵する地方私鉄の経営資料(営業報告書、株主総会決議録など)を継続して調査・収集し、特に免許行政の緩和化に対する各鉄道の反応(路線延伸計画)に注目した。また、個別経営資料では、青梅市郷土博物館が所蔵する「青梅電気鉄道文書」、長崎県立長崎図書館が所蔵する「植木家資料」にアクセスし、前者において青梅鉄道=青梅電気鉄道の経営資料、後者において同家当主の植木元太郎が社長を務めた島原鉄道の経営資料の調査・収集に努めた。 直接的な研究成果としては、鉄道史学会第30回大会(高崎経済大学)にて「戦間期における五島慶太の鉄道構想」を報告し、同名の論文を準備中である。関連する業績として、五島慶太の鉄道構想を第二次世界大戦後まで含めて検討し、これまで発表された彼の伝記では触れられていない諸事実をも盛り込んだ「五島慶太」(老川慶喜・渡邉恵一『情熱の日本経営史8 ライフスタイルを形成した鉄道事業』芙蓉書房出版、近刊)をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、本務校より在外研究の機会を与えられ、立教大学経済研究所の客員研究員として研究にほぼ専念できる環境に恵まれた。このことにより、それまで散発的な資料調査・収集にとどまっていた国立公文書館所蔵「鉄道省文書」の調査に、多くの時間とエネルギーを割くことが可能となった。研究目的の達成という点では、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究期間の最終年度となる。過年度に調査・収集した資料やデータは、かなりの分量にのぼりつつあるため、その整理・点検はもとより、学会報告・論文発表などのアウトプットをこれまで以上に強く意識していきたい。研究計画の変更、研究遂行上の問題点は現在のところ生じていない。
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Research Products
(4 results)