2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530350
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
大島 久幸 高千穂大学, 経営学部, 教授 (40327995)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 総合商社 / リスク管理 / 取引先信用 / 三井物産 / 三菱商事 / 両大戦間期 |
Research Abstract |
本研究では、わが国に総合商社が成立し得た要因の一つとして重要な意義を持ったとされるリスク管理制度について検討することを目的とする。総合商社のリスク管理制度については、その存続の条件としての重要性が指摘されつつも、従来、資料的制約から実証研究がほとんど行われてこなかった。本研究では、両大戦間期における三井物産、三菱商事の海外接収資料を活用して一次資料による実証分析を行う。 本年度の研究成果は下記の通りである。総合商社のリスク管理の対象には売越買越などの見込商売に伴う価格変動リスクと取引先信用不安に基づくリスクの2つがある。このうち、両大戦間期には取引先信用リスクが商社の営業上、重要な意味を有していた。1920年代にかけて取引先信用不安に基づく損失を増加させていた両社では、社内で取引先信用に関する管理制度を整備した。特に世界各地に幅広く営業拠点が散在する商社の場合、これら遠隔地での取引先信用の管理を構築することは容易ではなく、三井物産では、20年代に本店の監督機能を強化して取引先の破綻に伴って増大する不良債権の処理を減少させた。他方、国内外支店の側も各地での取引先情報の収集に努め、必要な営業上のリスクは保有できるよう努力した。ただし、全社的な保有リスク量には限度があるため、マクロショックなど経済環境の変化に応じて、本社はリスクの総保有量をコントロールしており、営業店もそうした本店の方針を遵守していた。他方、三菱商事では商品本部が営業店の取引先信用リスクを管理する手法を用いたが、取引先信用リスクを早期に確立した三井物産に比して、管理が徹底されない局面も見られ相対的に劣位な状況が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外接収資料に基づく総合商社の取引先信用リスクの管理制度については、資料調査も含め、おおよその目標を達成し、今年度すでに報告内容をまとめ、刊行物として公表しており、当初の研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。 残る両大戦間期の商社のリスク管理制度として、見込商売に関する管理制度の実態解明が課題となるが、それら管理制度についても、今年度、学会発表を通じてその成果を公開し、多くのコメントを得た。 最終年度では、これら学会報告や成果発表で得た批判をもとに両リスク管理について総括する十分な時間を確保できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究最終年度にあたるため、両大戦間期の見込商売について、その成果をまとめ、過年度までに成果としてまとめた取引先信用に関する管理制度と併せ、総合商社のリスク管理制度を総括したい。 成果については、前年度同様、学会報告等を通じて、広く公開して批判を仰ぎ、より完成度の高い研究成果をまとめるようにしたい。
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