2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530375
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三橋 平 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (90332551)
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Keywords | 代理学習 / 失敗からの学習 / 認知バイアス / 高信頼性組織 |
Research Abstract |
本研究の目的は,組織間学習を促進・抑制する要因を体系的に解明し,実証的に検証を行うことである。組織間学習とは,組織自らの過去の経験に基づいて発生する経験学習とは異なり,他組織経験の観察,関連情報のエンコード,因果関係の推測に基づく学習の形態を意味する。この研究を通じ,「対岸の火事」をどうすれば「他山の石」に変えることができるのか,よりよく他の組織の経験から学習できる条件とは何か,を明らかにしていくことを目的としている。 平成23年度では,前年度の分析から導出した仮説を検討した。具体的には,認知のバイアスやヒューリスティックスによって,経験の蓄積が必ずしもルーティーンの変化,すなわち組織学習をもたらさない可能性について検討を行った。具体的には,「ほぼ同じ経験バイアス」という,他者がある失敗経験をしても,自らがそれと同じではないが,ほぼ同じような経験を行った場合,その他者の失敗に対する傾注が弱くなるために代理学習が発生しない,という仮説である。この仮説を論文として執筆し,海外ジャーナルにおいて掲載を行った。仮説の検証には日本の原子力発電所における法律で報告の義務のある事故に関するデータを用いた。データは,日本原子力発電の東海原子力発電所が創設された1966年から2006年までのものを収集した。原子力発電所は高信頼性組織と呼ばれており,失敗による学習ではなく,他者の経験から学習することが重要である。そのため,このコンテクストのデータを使用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分析に基づいた論文の執筆が終了,また,掲載が決定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当面の短期的な課題については,ある程度の解決を持っているが,研究を進めるプロセスにおいて新しい問題が明らかになってきた。特に,認知的問題,認知的バイアスの問題が組織間関係,組織間のインターアクションのコンテクストにおいて掘り下げられていないことが明らかとなった。今後は,この点について問題の掘り下げを行っていこうと考えている。
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