2011 Fiscal Year Annual Research Report
技術政策と経営戦略:産官学プロジェクトとイノベーション
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22530400
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
島本 実 一橋大学, 大学院・商学研究科, 准教授 (20319180)
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Keywords | 技術政策 / 経営戦略 / イノベーション / 国家プロジェクト / 産官学連携 / 再生可能エネルギー / バイオテクノロジー / 機能性材料 |
Research Abstract |
日本政府は産業発展に貢献する新技術の開発を政策的に支援してきた。とくに石油危機後は再生可能エネルギーやバイオテクノロジーなど重要な技術研究開発の国家プロジェクトが数多く実施された。本研究はこれらの政策がどのような成果を上げたのかについて、企業の経営戦略の観点を踏まえつつ、技術政策と経営戦略の相互作用の視点から明らかにすることを目的としている。複数の産業の横断的、かつ時系列的な比較を通じて、技術政策の効果や経営戦略との対応関係が明らかにされる。 平成23年度は太陽光発電に関して、これまでの研究をまとめ、合理的行為者、組織過程、官僚政治の三つの観点から国家プロジェクトを分析する試みを学会で報告した。国家プロジェクトの計画と実施のプロセスが、第一に計画の目的にしたがって手続きが決定され、それらが変化する環境の中で実施されていく過程であると解釈されるならば、成功は計画の正しさから、失敗は想定外の環境変化や計画の誤りから説明される。第二にルーティンが先にあり目的は後から変化するものだと解釈されるならば、計画の成功は組織能力から、失敗は官僚制の逆機能から説明される。第三に計画の目的が、ルーティンの制約下にありながらも、外部環境の変化に応じてプロジェクト参加者の構想によって変化していくものだとするならば、計画の成功は構想の正しさから、失敗は構想の名の下での資源動員の誤りから説明される。 平成23年度は、再生可能エネルギーの国家プロジェクトの事例研究を通じて、計画を成功に導くための方策を検討した。その際に、第一のモデルに基づけば環境認識や計画策定の妥当性が問われることになり、第二のモデルに基づけば、組織過程における環境対応能力の向上や逆機能の抑制が重視されることになる。第三のモデルに基づけば、経営構想や研究者の研究開発ビジョンへの合意の調達と資源配分が決定的に重要になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と比べると事例研究の順番は若干前後しているが、全体的には研究は計画通り進展している。平成23年度においてはその成果は10月に開催された経営史学会全国大会で発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、太陽光発電については、サンシャイン計画の歴史というかたちで成果を期間内に書籍にまとめることを目指している。またバイオ、機能性材料、電子に関しても、次世代プロジェクト制度の歴史として期間後数年の間に書籍を著すことを計画している。
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Research Products
(3 results)