2013 Fiscal Year Annual Research Report
知識移転のネットワーク構造がイノベーションに与える影響
Project/Area Number |
22530426
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中内 基博 東洋大学, 経営学部, 准教授 (20339732)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 知識移転 / 技術 / 情報獲得者 |
Research Abstract |
本年度は、日本の電機メーカーの技術開発部門の技術者に対して行った質問票調査の分析を中心に行った。過年度では、情報提供者と情報獲得者それぞれに焦点を当てた知識移転ネットワークの分析を行ってきた。本年は、年度の前半に、情報提供者側から見た知識移転の要件に関する分析フレームワークについての論文を作成し、国内雑誌に掲載した。情報提供者側から見た知識移転に関する研究は、これまでほとんど存在していないため、本年度は理論的構築に努め、来年度に行う実証研究の基礎とした。 年度の後半は、情報獲得者に焦点を当てた論文を作成し、国内雑誌と海外の学会へ投稿した。分析結果としては、同一組織内においてもグループ内およびグループ間ではやり取りされる技術情報の質や、技術関連の知識の移転要件が異なっていることが明らかになった。この結果は、知識移転の効率性や有効性を考える場合には、組織の境界がモデレータファクターになる可能性を示唆するものと考えている。国内雑誌は査読中であるが、2014年夏に海外の学会において報告する予定である。 また、上記のようなミクロ的な観点に加え、本研究ではマクロ的観点として、トップ・マネジメントが技術開発動向に与える影響についての考察を試みている。これらについては、分析結果は得られているものの、さらなる理論的考察が必要と考えている。その成果の一部は、海外のジャーナルに投稿し掲載が決定している。 なお、本年度は作業効率を高めるため、最新のノートパソコンを購入し、データの解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
情報獲得者に焦点を当てた分析は順調に遂行できたと考えている。国内雑誌と海外の学会への投稿にまでこぎつけることができた点は、予定通りである。ただし、情報提供者に焦点を当てた分析については、理論ベースでの論文を提出することができた一方で、データの入手および変数化に制約があり、分析が遅れている。また、特許と移転される技術関連知識の関連性については知識移転のネットワークやインタビューでは確認できたが、論文として論じることができるような新たなファクトにはつながっていない。 また、マクロ的視点からの研究として行っているトップ・マネジメントと技術開発動向の関係性については、日本独自のガバナンスを考慮したモデルの構築が必要であることがわかってきたため、理論的により深い考察が必要となった。したがって、予定よりも理論構築に時間がかかっているため、やや遅れていると認識している。 これらについては、来年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度であるため、より成果を意識して論文や発表につなげていきたいと考えている。そのためにも、まずは情報獲得者に関する論文を雑誌に掲載することを目指すとともに、情報提供者に関する実証分析を行い、論文として投稿したいと考えている。次に、こうした情報提供者及び情報獲得者の知識移転の要件が、イノベーションとどのように結びついているのかについて解析していく予定である。 なお、マクロ的観点からの研究は分析結果が得られていることから、理論的構築を急ぎ、できるだけ早い段階で論文として投稿することを考えている。 また、研究を効率的に進めるために、海外の学会に出かけて、最新の研究動向に関する情報を収集するとともに、本研究に対する研究者の意見を伺う予定である。これらの情報をもとにして、分析モデルの精緻化に努めるとともに、論文の作成を行いたい。
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