2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530444
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
伊田 昌弘 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (50223079)
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Keywords | グルーバルICT / 小島理論 / レディング学派 / 国際的在庫循環 / ネットワーク構造 / 情報コスト / 知財の国際移転 / 新興国の台頭 |
Research Abstract |
本研究の2年目である本年度(平成23年度)は、次のことを行った。 1.理論的な基盤を固めるために、国際経営論や多国籍企業論における従来からの異なった2つの代表的アプローチである「小島理論」と「レディング学派」について比較検討した。その結果、不完全競争、企業の製品多様化、取引コストといったリアルな国際ビジネスからの要請に対して「コミュニケーション・ネットワーク」のアプローチが「小島理論」の拡張のために有効であること、また「レディング学派」に関しては環境の変移性と「情報コスト」の減少による効果から従来の国際企業といえども、「独占的優位性」や「内部化」よりも、「市場」を利用した、より柔軟な企業組織の検討が必要なことを示した。この研究成果は『世界経済評論』に掲載された。2.Academy of International Business (AIB)の2011年世界大会において、学会発表を行った。小島理論を応用した「新興国」における技術移転が「ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)」「ネットワーク外部性」「知財の国際移転」という視覚から説明できることを明らかにした。3.さらに、国際的な研究交流のためにカナダ・オンタリオ工科大学のTerry Wu教授を訪問し、共同研究を行った。ICT時代の市場メカニズムの研究として、「出荷在庫統計」のデータ整理と国際比較の基礎統計を求めた。その結果、(1)在庫増減率が1995年以降小さくなっていること、(2)さらに在庫循環の国際同時性がみられること、が検出された。そして企業のSCMによる在庫削減効果は、景気の世界同時性を生み出すという新しい結論を得た。4.また、東洋経済データベースを用いて、3の論点につき、企業ごとの分析が可能であるか、検討した。3の論点はセミマクロといった産業単位のレベルで言えても、企業ごとで言えるかどうか、が問題である。企業環境変化と企業組織にどのような変化あるいは対応関係が見られるのか、第3年目への課題となった。次年度は以上を踏まえて、さらに掘り下げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果として2つの論文を発表した。また、平成24年度は著書を2冊刊行予定であり、「多国籍企業学会」の全国大会と「国際ビジネス研究学会」関西部会での発表も予定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度までのまとめと「ICTスタートアップ」と「頭脳環流」研究のため、インドへの海外研究を予定している。頭脳循環として注目されているインドのソフトウェア産業の実態調査及び企業ヒアリングを9月に実施する。すでに2004年に踏査したインドの企業ヒアリング(13社)から5年以上が経過しているが、この間HCL,Infosys,Wipro,タタなど大手企業がビジネスを国際的に成長させている。また中小の民族系企業が30%前後のシェアを獲得している。当時、コーディング等の下請け業務から脱出を図っていた大手に比して、中小企業の国際ビジネスには変容が見られるのであろうか。またオンサイトVSオフショアの推移、業務用基幹ソフト、eソルーションビジネスなどを通して、既存の多国籍企業との間に戦略的パートナーとしての役割がみられるかどうか、国際分業の視点からを明らかにしたい。
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Research Products
(5 results)