2011 Fiscal Year Annual Research Report
日米政治マーケティングの民主的意義-08年以降の選挙と政権運営の検証評価
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22530450
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
平林 紀子 埼玉大学, 教養学部, 教授 (30222251)
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Keywords | 選挙 / マーケティング / 米国政治 / 日本政治 / 民主政治 / 政治コミュニケーション / メディア / 公共経営 |
Research Abstract |
■本研究の目的:日米の2008-09年選挙とその後の政権運営における、対有権者市場開発訴求戦略技法としての政治マーケティングの展開とその民主的意義を、異なる政治制度を架橋する多元的モデルに基づき実証的に解明する。 ■平成23年度研究実施計画の焦点(1)(2):2008年以降の日米選挙と政権運営のマーケティング事例分析(継続中) ○研究成果2008年 米大統領選挙および2009年衆院選以降の日米民主党政権における「変革」公約の実現過程、その制約と戦略的再定義の過程、選挙と政権の戦略異同を、報道内容ならびに政党、政治コンサルタント、学術研究者への聴取を通じて調査分析した。 ○成果の意義(1)米政権は政府財政悪化、景気雇用対策の成果遅延に加え、最大の業績たる医療保険制度改革や経済格差是正・環境重視資源政策など「変革」の象徴的分野(特に内政)において、政権ブランドの危機にある。変革期待値を上げる選挙運動のマーケティングと、変革の具体的内容・優先順位・実現速度をめぐる統治過程のそれとの違いに応じた、政権の戦略的再調整は拙速である。(2)再選可能性が疑問視されるなか、基盤支持層固めに加え隙間市場を網羅・獲得するために、データマイニングと説得と組織化をオンライン一元化する画期的技術を開発援用する。(3)日本の民主党政権は、政党内部の軋礫のために組織的マーケティングは全く機能しない。公約の再定義も、政策調整力や広報力の欠如のために安定性や信頼性に欠け、変革政党としてのブランドは崩壊した。東日本震災復興を含む内政・外交の個別政策分野でも、政権与党としてのコンセプト不在によって場当たり対応に終始し、政党としてのメッセージはない。自民党もまた対抗コンセプトを提示できず、有権者市場から遊離している。(4)二大政党のマーケティング不在の一方、地域政党「大阪維新の会」(代表:橋本徹・現大阪市長)など、明確な変革コンセプトと政策対立軸で有権者市場の不満を吸い上げ、広報発信力に優れた新興勢力の動きが国政レベルで活発化している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国の事例研究は予定通りに進捗している。日本の事例研究は、東日本大震災後の政治状況の変化、特に政権が抱える政策課題の著しい増加、ならびに政策優先順位の変化、加えて民主党政権の意思決定過程の不透明性のために、情報収集と分析に予想以上の時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)日本の民主党政権に関する情報収集については、政治資金報告書や備忘録などの公開出版資料の分析に比重をおくとともに、計量データの二次分析の対象を絞り込み、研究の効率化を目指す。 (2)本研究のテーマに直接関連する他の業務(単著研究書の執筆、国際研究集会の企画編成と運営)との、研究内容における連携、連動性を強化し、本研究に対するエフォートの実質的水準の引き上げを目指す。
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