2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本の若年層における海外旅行阻害要因:その構造と認知変化
Project/Area Number |
22530454
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
中村 哲 玉川大学, 経営学部, 准教授 (40348355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 幸子 同志社大学, 商学部, 准教授 (30454482)
高井 典子 文教大学, 国際学部, 准教授 (90540435)
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Keywords | 観光行動 / 阻害要因 / 海外旅行 / 若年層 / 自己効力感 / 質的調査 / 量的調査 / 理論研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は,2000年代以降に指摘されるようになった"若者の海外旅行離れ"現象を踏まえ,日本の若者による海外旅行への参加・不参加の意思決定を説明するための観光行動の理論を提起することにある. 昨年度は,旅行をしない要因,すなわち「阻害要因」に関する文献研究を行い,「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」を構築した. 今年度の前半は,「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」の精緻化を図る作業を行った.1つ目に,昨年度の後半から実施してきたさまざまな海外旅行の経験と興味を持つ学生を対象に質的調査(デプス・インタビュー)の結果をふまえ,このモデルの説明可能性を検討した.2つ目に,複数のコンファレンスにおいて本モデルを発表した.そこでのコメントを受けて,すでに1度以上海外旅行に参加している人だけではなく,海外旅行未経験者に対しても説明が可能となるように改良を加えた. 後半では,次年度に「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」を実証分析する計画を実施するべく,モデルを構成する各概念の尺度の開発に取り組んだ,このモデルには「動機づけ」「すりあわせ努力」「自己効力感」「阻害要因」「参加レベル」「経験に対する評価」と6つの概念から構成されるが,そのうち「自己効力感」について,海外旅行に適用する場合に限定して概念の詳細な検討をした上で,これまでに実施した質的調査のデータ,他の分野の自己効力感尺度を取り入れて,32項目の尺度を開発した.大学生ならびに18~29歳の一般の若者を対象に調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性の検証を行った. 次年度においては,モデルの実証を行うことを目的とした大規模な調査を実施する計画であり,現在,その準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,2年目(平成23年度)終了までに大規模な量的調査の準備を行い,3年目(平成24年度)の4~5月頃に実施することになっていた。現状(=2年目終了時点)では,文献(理論)研究と質的調査の成果を踏まえて構築した「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」を量的調査により検証するべく,構成概念を測定する尺度の開発等詳細な準備を行っている段階であり,平成24年度の前半に実査を行う目途は立っている.ゆえに,「おおむね順調に進展している」と評価したい.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の前半は,「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」を実証する大規模な量的調査実施にむけての最終準備を進めていく。すでに目途のたっている「阻害要因」「自己効力感」に加え,「経験に対する評価」「動機づけ」「すりあわせ努力」の測定方法の細部の詰めを行う.その上で,年度の前半に大規模な量的調査を実施し,年度の後半でその分析作業,考察,ならびに速報の研究発表を行う計画である. 本研究の最初の出発点として,いわゆる"日本の若者の海外旅行離れ"を解決するための方策を提案し,政策立案に貢献することがあった.理論研究を進めてきた中で,若者の「海外旅行に対する自己効力感」を高めることが重要であるとの方向が見えてきた.平成24年度の後半では自己効力感を高める方法についても検討していきたい. また,本研究で提案する「海外旅行への参加レベルに関する動態的循環モデル」を用いて若者の観光行動を説明することはもちろん,このモデルの適用対象の拡大をより一般化させ,観光行動研究,さらには消費者行動研究に理論的な貢献をすることを意識して研究を進めていきたい.
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