2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530494
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大沼 宏 東京理科大学, 東京理科大学経営学部, 准教授 (00292079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 譲 北海道大学, 経済学研究科, 准教授 (10335763)
加藤 惠吉 弘前大学, 人文学部, 准教授 (70353240)
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Keywords | ストック・オプション / 租税回避行為 / 移転価格税制 / アラインメント効果 / 経営者裁量行動 / 無形資産 / 税務リスク / 租税関連事象 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は3つのアプローチによってまとめられる。第一のアプローチは、ストック・オプション(S.O.)訴訟に関わる市場反応と、その根底にある税務状況との関係の調査である。分析結果としては、S.O.行使による行使益を一時所得とする判決に好感する反応は観察された。他方、給与所得とする判決では、市場参加者の失望を示す反応を観察している。本研究の含意として、市場参加者にとって租税関連事象の情報価値が高いことを示唆しており、今後も租税関連事象に市場参加者は強い関心を寄せることを暗示する。租税関連事象は株主の利害と密接に関わることから、租税関連事象がS.O.のアラインメント効果に与える影響を今後は分析していく予定である。 第二のアプローチは、経営者の租税回避行為と利益調整行動の関連性の調査である。本研究の成果は、租税回避行為が経営者の利益調整行動が原因となっている可能性を示唆した点である。大沼[2010]では、税務計画を通じた経営者の利益調整行動の可能性を検証した。分析の結果、租税回避行為と利益調整行動は有意に負に関連することが明らかになった。この結果は先行研究であるFrank et al.[2009]の結果とは、明確に相違する。米国企業と異なり、日本企業は利益調整を進める一方で租税回避行為を行うものの、一方が他方を抑制する関係にあることが明らかになった。 第三のアプローチは、移転価格税制を巡る国税当局と企業との関連性についての研究である。加藤[2010]では施行20年を経た我国の移転価格税制の課税状況について統計を用いながら執行状況について考察している。大沼[2011]はイベントスタディの手法を用いて、移転価格税制による査察を受けたことを自発的に開示した企業に対する市場反応を調査する。分析の結果、移転価格税制の適用に伴って租税負担に変化が現れるという自発的開示情報は、一貫してネガティブな情報として市場から評価された。今年は初年度ということも有り、研究目的に沿って進みつつも、まだ途上にある。今後は租税関連事象に対する市場反応を中心に、租税状況とコーポレート・ガバナンスの関連性について検証していくことを予定している。
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Research Products
(7 results)