2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530494
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大沼 宏 東京理科大学, 経営学部, 准教授 (00292079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 譲 北海道大学, 経済学研究科, 准教授 (10335763)
加藤 惠吉 弘前大学, 人文学部, 教授 (70353240)
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Keywords | 移転価格税制 / 市場評価 / イベント・スタディ / 3ファクターモデル / 経営者報酬 / コーポレート・ガバナンス / 税負担削減行動 / 負債比率 |
Research Abstract |
平成23年度は研究代表者と研究分担者の全員で移転価格税制についての新聞報道と企業評価の関連性について検証した。研究の目的としては、税務状況とコーポレーと・ガバナンス構造との関連性を検証することであった。しかし、平成23年度は時間的な制約もあったことから、移転価格税制の運用について税務当局から何らかの指摘を受ける企業に対して、市場はどのような評価を下すかを、株価データを利用して検証した。本研究ではFama-Frenchの3ファクターモデルを用いてイベントスタディを実施し、移転価格税制の運用に関して税務当局から指摘を受ける企業は、強いマイナスの評価を受けることが明らかになった。平成24年度は研究実施計画に沿って、市場からのマイナス評価が企業の税務状況、コーポレート・ガバナンス構造と系統的に関係するかを検証する計画である。 ストック・オプションと税務状況の関連性については、今年度はストック・オプションについての交付条件と市場評価の関連性を中心に検証を行った。ストック・オプションについての2種類の判決が下された日の、それぞれの株式市場超過リターンとストック・オプションの交付条件は有意に関連することが明らかになった。ストック・オプションの交付条件は企業のコーポレート・ガバナンス構造とも密接に関係する。株式市場はこうした関係を透徹して評価していると示唆される。 その一方で、経営者報酬とコーポレート・ガバナンス構造はどのように結びつくのか、これと税務状況はどのような関係にあるかを、財務データ等を通じて分析した。分析の結果、税務状況として租税負担の軽い企業(すなわち税負担削減行動を実行している企業)ほど経営者報酬は高い。税務計画はリスクの高いプロジェクトであり、これに企業は経営者報酬の形で答えているという示唆が得られる。こうした企業ほど外部取締役を取締役会に招聘していたり、機関投資家の株式保有割合も高いことが分かる。 もう一つの研究プロジェクトとして、大沼研究室の大学院生である佐々木和弘氏との共同研究において、税負担削減行動を実行する企業と負債比率の関係を検証した。分析の結果、負債比率の高い企業ほど税負担削減行動に積極的ではないことが明らかになった。税負担削減行動はリスクの高いプロジェクトであり、定額のリターンしか期待できない債権者らはこうした行動に対し、抑制的であるという仮説が実証されたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では経営者報酬の支払い状況とコーポレート・ガバナンスの関係性を検証する予定であった。これについては、計画よりも進んでいる。一方で、裁量的会計発生高との関係については、まだ分析に入っていない。計画の中でも確実に進んでいる箇所と未着手の箇所の両方が存在する。全体としては、概ね順調と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、計画に沿って基本的に進めていく。研究課題名の通り、税務状況とコーポレート・ガバナンスの関係性は柱であり続ける。ただ具体的に研究計画を遂行していく中で、税務状況のどういった側面に注目するかで当初計画と少しずれてくる可能性はあり得る。その場合も研究実績として忠実に説明していく。
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Research Products
(6 results)