2011 Fiscal Year Annual Research Report
修正再表示の発生要因と経済的インパクトに関する日米比較研究
Project/Area Number |
22530497
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
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Keywords | 財務会計 / 会計監査 / 決算訂正 / 修正再表示 / 企業ガバナンス / 訂正予測モデル |
Research Abstract |
2004年度から2009年度に生じた決算短信上の利益に関する訂正情報をサンプルとして,利益訂正に対する市場の反応および利益訂正の発生確率と企業ガバナンスとの関係を米国の研究と比較しながら実証的に分析した。市場の反応については,過年度への遡及訂正に関する情報について市場は統計的に有意に反応しており,昨年より導入された新しい会計基準における修正再表示の方法(過年度への遡及修正)を肯定する結果が得られた。また,特定企業の利益訂正に対する同業他社の株価への影響(伝播効果)についても分析した。その結果,伝播効果が確認され,さらに,発生項目額が相対的に大きいほど伝播効果が強いことが明らかとなった。これは,特定の利益訂正が同業他社の会計情報の信頼性の低下を招いていることを示唆する結果である。利益訂正と企業ガバナンスとの関係については,監査役の社外性は利益訂正の発生確率に影響しないが,その会計専門性が影響することがわかった。これは会計専門性を重視しようとする規制上の動きと整合的であるが,一部の会計専門性に関しては疑問を投げかける結果であった。さら,訂正発生後の会社役員の交代状況を分析したところ,CEOやCFOに相当する役員の交代確率は明らかに高まっているが,監査役に関しては交代確率の上昇は観察されなかった。この結果は,意図的な誤謬(会計不正)を原因とする利益訂正において顕著であり,会計監査の職務を担う監査役に関する企業の人事政策についてさらに検討する必要があることを示唆する結果であった。 これに加えて,SECが登録企業に送付するComment Letterについての検討を開始した。米国ではその件数が非常に多く,SECが企業の開示実務を詳細に検討していることがわかる。この作業を開始したところであるため,これに関する具体的成果はまだあげられていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した内容のほか,検出モデルについての分析もほぼ終了しており,本年度の計画内容は概ね実行した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに終了した分析を著書としてまとめる予定である。また,米国における研究者との議論においてSECから登録企業に送られるComment Letterの内容が修正再表示に関する研究に示唆を有しているとの感触を得たので,当初の研究計画に加えてComment Letterについての検討を行う予定である。
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