Research Abstract |
平成23年度は,国内の環境リスク開示の分析を行い,国内海外でこの分野の共通の視点から研究を行う学術及び実務分野の関係者のヒアリングを行うことができた。中でも,環境リスク情報が,実際に証券市場で公表される場合,有価証券報告書が主な開示報告書となるが,その場合,非財務・記述情報が,日本企業あるいは欧米企業でどのように開示されているかを検討分析できた。 さらに,イギリス,アメリカ,カナダでの環境情報の開示を促進する法規制と関係団体の公表文書を分析した。イギリスの文書に関しては,発行元の会計団体,実務家,学術研究者と環境情報の開示レベルに関する具体的で実践的討議を行った。また,開示と報告に関する国際学会への参加を通じて,国際レベルでのこの問題の議論を把握し,問題点を理解することができた。イギリス,アメリカ,スペイン,ハンガリー,フランス,オーストラリアの研究者による企業情報開示と関係者の視点の分析が,とりわけ興味深く,またブラジル,中国,インドネシアなどの新興諸国の研究者のスタンスとの比較検討を経て,わが国での研究の視座をよく整理することができたと考える。 特に,温暖化ガス情報の開示に関する英国やアメリカでの研究動向について,この問題がかなりの関心事であったことが伺えた。またCOPなど国際的気候変動条約の動向は,今後の統合報告,環境・CSRレポート,環境リスクその他の財務報告での情報開示に関する国際的動向を考える際の重要な論点であり,専門家との討議と情報収集を経て,重要な知見を得ることができた。 以上,平成23年度は所定の計画の内容についておおむね実施でき,今後,研究の深度を増し,最終的な概念整理と論文の取り纏めに入りたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の学会および国内での情報収集を通じて,関係者と意見交換を行うことで,研究分野の最新の国際的動向と知見の潮流を正確に把握でき,それにより調査研究の方向性を確認できたこと,さらにそれにより当初より最終年度で行う予定の調査項目内容やアプローチを吟味でき精緻化することにつながったと考えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
環境政策の国際的動向をふまえ,持続可能な開発および環境問題の企業財務報告での開示のための概念整理と,重要経営指標やリスク指標について整理し,検討していきたい。この分野で,世界で先進的で実践的な資料を提供している,イギリスおよびドイツ,カナダ,アメリカの様々な企業開示に関連する機関からの指標や開示指針を整理していきたい。H23年度でパイロットテスト的に実施している,証券市場関係者や,企業開示に関連する当事者,財務諸表監査にあたる公認会計士など関係者を対象としたヒアリングや質問を,体系的に整理していきたい。なお,すでに実践的な開示分析と検討はおおむね終了しており,H24年度は概念整理と検討課題の整理に入りたい。環境リスクの中で,いくつかの論点とリスクの考え方について理論的実践的な視点で整理が必要かもしれないと考えており,専門家の知見を要する場合には,直接インタビューを行うこととしたい。
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