2012 Fiscal Year Annual Research Report
地方公営企業の経営健全化を実現する会計制度のあり方に関する理論的・実務的研究
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22530507
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
西尾 宇一郎 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20411796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 俊彦 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20223018)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水道 / 下水道 / 財政健全化 / 原価 / 水洗化 / 地方公営企業会計基準 / 交通事業 |
Research Abstract |
本年度は、全国の水道および下水道事業においては、水道料金のほうが下水道料金より高く設定されているケースが圧倒的に多く、それが逆転している場合であっても水道料金より若干高い設定になっているという程度であり、下水道料金が水道料金の3~4倍に設定されている例は皆無となっていることを実証的に考察した。水道料金の3~4倍もする下水道料金を設定すれば、全国でこれほど水洗化率が増加したとは考えられない。料金を低く抑えることによって下水道の普及、水洗化が進み、現在の水準までとなった事実は否定できないものなのである。 しかしながら、収支の均衡、経営の観点から考えると下水道事業においては、原価見合いの収入には到底及ばないものとなっているのが現実であり、収支や経営という観点からはほど遠いところにあるのが実態であると言える。当時は国策等もあって下水道事業を進めたものと考えられるが、スタート時点にしっかりとした将来的な経営基盤が思考されていたか、については疑問の生じる余地がある。見切り発車的要素もあったのではないかと推測されるところである。 現在、全国的に自治体の財政健全化は喫緊の課題であり、水洗化を進める場合においても、効率化や手法の見直し、原価と料金のバランス等、経営改善が必須となっている状況にあり、これを避けて通ることは出来ないものであることを認識しなければならない。なお、下水道の法適用事業のほうが法非適用事業より料金単価は若干高くなっている。つまり、法非適用事業に比較して収入が多いといえよう。しかしながら、それにも関わらず、赤字事業の数は法適用事業のほうが圧倒的に多いことが解明された。これらは、交通事業を含めた地方公営企業会計基準のあり方を議論する際に、極めて重要な実証結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交通事業についての考察が遅れている。今年度、現地視察等を行ったものの、理論的考察はこれからである。最終年度は、交通事業を想定した地方公営企業会計基準の分析に一層の考察時間を投入する。
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Strategy for Future Research Activity |
水道事業と下水道事業については、引き続き理論的な考察・分析を中心に行うものとする。 交通事業については、追加的な現地視察に加えて、本格的な理論的考察・分析に着手し、今年度中に一定の効果を実現できるように、最大の努力を行うものとする。
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