2010 Fiscal Year Annual Research Report
等依存性原理を組み込んだ公正な分配の規範的理論の構築に関する社会学的研究
Project/Area Number |
22530512
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
盛山 和夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50113577)
|
Keywords | 等依存性 / 最後通牒ゲーム / 実験ゲーム / 公正 / Shapley value / ロールズ / 互恵性 / 合理性 |
Research Abstract |
本年度は、最後通牒ゲームなどを中心とする実験ゲームにおいて出現する利得配分の多くが、等依存原理から説明できることの解明に重点をおいて研究した。最後通牒ゲームでは、合理的な行為者であれば、オファーする側は総利得のうちのほとんどを自分のものとする配分を提示し、オファーされる側はそれを受け入れるはずだと想定される。しかし実際の実験では、極端に偏った配分のオファーは拒否されることが多く、最終的な利得配分はフィフティフィフティ配分の近くに分布している。これまで、この結果を説明するいくつかの議論が提示されてきた。Fehr and Schmidt (1999)は、行為者の効用が「利得配分の平等度」によっても規定されているという説明を試みているが、明らかにアドホックな説明でしかない。Chiang (2008)は、プレイヤーたちが過去において利得の高かった戦略を採用していくという進化ゲームをシミュレーションしているが、実際の実験プロセスにはそうした進化過程が作動するしくみは埋め込まれていない。Gintis et als (2005)は、「協力の規範」として「互恵性reciprocity」が働いているとし、信頼ゲームや雇用者ゲームなどでの実験結果にもそれがはてはまるとしているが、互恵性の概念は広すぎて、たんに「プレイヤーたちは自分の利得を高めることだけを考えているのではない」ということしか意味していない。 本研究では、それらに代えて、「協力の結果として全体にもたらされる利得の増分を平等に分配しようとする」という「等依存性原理」こそが、多くの実験結果をよりよく説明しうること、また、利得配分の数理的指標の1つであるShapley valueがそれと密接に関係していることを示し、さらにロールズの「公正」概念との関係について探求した。
|
Research Products
(4 results)